民間の動画配信サービスとの比較を牽制

 テレビ局関係者はいう。

「受信料収入が年々低下傾向にあるなか、NHKとしてはネット事業を必須業務化して本格的に展開することで、それを名目に『テレビを持っていなくてもスマホを所有していれば受信料を取りますよ』という流れに持っていきたい。総務省のWGでは、まずは専用アプリの利用者から受信料を徴収する方式から始めることが提案されているが、有料の動画配信サービスを展開している民放各社は民業を圧迫されるとして反発している。こうしたなかで、NHK受信料が各種動画配信サービスの利用料と同列に扱われて議論されることを牽制するために、『あくまで放送の自主性の高い組織を運営するための財源』だと強調しているのだろう。

 以前から国民の間では『NHKを見ないのに、なぜ受信料を払わなければならないのか』という不満は根強く、専用アプリに加入した人から受信料を徴収するとなれば、見たい人だけが加入して料金を支払う動画配信サービスが引き合いに出されるかたちで議論が展開されるのは必至で、同列に議論されるのを避けたいNHKが『受信料は見る見ないに関係なく国民が負担すべきものなんですよ』と改めて訴えているようにみえる」

 また、別のテレビ局関係者はいう。

「視聴率や特定の勢力の影響にとらわれずに中立的な立場で放送する組織を運営するために受信料を徴収するというが、受信料を使って数多くのバラエティ番組や歌番組、ドラマ、さらにはジャニーズ事務所のタレントの専門の歌番組まで制作している実態と整合性がつかない。巨費を投じて『紅白歌合戦』や『大河ドラマ』などを制作していることにも合理性がない。国民が最低限必要とするニュースや災害情報などを発信するだけなら、現在のNHKのような肥大化した組織は必要なく、国がNHK受信料よりずっと低額の税金を国民から集めて独立法人のようなかたちで情報を発信していけばよい。そのほうがずっと国民からも理解を得やすい」

 NHKが受信料徴収の正当性の根拠とする「放送の自主性」には疑問を指摘する声も多い。また、NHKの受信料が憲法第13条に違反しているという指摘も以前から根強い。当サイトは3月27日付記事『NHK、未契約者に2倍の受信料「割増金」請求へ…憲法違反、テレビ非保有者も徴収』でこの問題を検証していたが、今回、改めて再掲載する。

――以下、再掲載――

 NHKは4月から、期限内(受信機設置の翌々月の末日)に受信契約をしなかったり、不正に受信料を支払わない人に対し、本来の受信料の2倍の割増金を課す制度を開始する。未払いの受信料も合わせると通常の3倍の支払いを求めることになる。昨年の放送法改正を受けたものだが、受信契約の解約や受信料免除に不正がある場合や、衛星契約など料金が高い別の契約へ変更した後も正しい契約種別の放送受信契約書を提出しない場合も割増金請求の対象となることから、さまざまな声があがっている。

 NHKの受信料徴収をめぐる動きは大きな転機を迎えている。今年10月からは、NHK総合とEテレを視聴する「地上契約」、BS1やBSプレミアムなどの衛星放送もセットの「衛星契約」の受信料を約1割値下げする。

 その一方、NHKはテレビを保有していない人からも受信料を徴収する動きを加速させている。すでに現在でも、自宅にテレビを設置していなくてもチューナー内蔵パソコン、ワンセグ対応端末の保有者は受信料を支払わなくてはならないと定められているが、昨年9月の総務省の「公共放送に関する有識者会議」では、テレビを持っていなくてもスマホなどで放送を見る人について「負担を議論していく必要がある」との意見が提起。NHKは2017年に公表したNHK受信料制度等検討委員会の答申案で、スマホやインターネットの利用者からも受信料を徴収する検討を始めており、テレビ非保有者からも広く徴収する流れが固まりつつある。

 そうしたなかで始まる割増金制度をめぐっては、SNS上で次のようにさまざまな意見が出ている。

<見たい人だけ見られる様にすればいいだけだと思う。わざわざ人件費割いて未払いの家に訪問させるなら「見たい人にはお金を払ってもらう」が一番いい方法>(原文ママ、以下同)

<デジタル時代、未払いには映らなくしたら済む問題では。この情報化時代、NHKが必要か考える方が先ではないかな>

<視聴していないのに視聴料をとる現行法はおかしい。だから皆が口を揃えて言う様に必要な人だけが、受信料を支払うスクランブル化が急務>

<罰則を作るのは自由だが、その前に解約の自由やスクランブルを実現化してからじゃないと駄目でしょ。こんな一方的なお金の稼ぎ方は詐欺だよ。役員報酬を減らし、職員の年収を一般平均に落とし、偏向報道を辞め、スクランブル化の実現と解約の自由を行ってからするべき>

<今の時代、観たい物をお金払って観る時代になりました。NHKも払わない人には映さないようにシステム変更したらいいと思う。なぜ、強制的に支払いさせるのか?昔はそれで通用してましたが今時、有料チャンネルが増えて、観たい物にお金を払う時代になりました。強制的に料金取るのはもはや時代遅れ>

<そもそもテレビを設置すれば強制的に払わないといけないのだから「NHKの価値や受信料制度の意義に共感していただき、納得してお手続きやお支払いをいただく」方針ではないよね。この方針だと納得しない人が払わないと言う選択肢は正しいのに罰則徴収はおかしい>