金融界には、利益相反のおそれのある事態は少なからずある。代表的な事例としては、投資信託の販売会社の取扱商品選定において、同じ金融グループに属する投資運用業者のものが優先されていること、および、企業年金資産の運用委託先の選定において、母体企業と親密な関係にある金融グループの投資運用業者が優先されていることがあり、これらは、好ましからざる事態として、金融界の誰もが認知している。

しかし、好ましからざる事態であるにもかかわらず、それらは是正されることなく放置され続けている。なぜなら、さすがに利益相反が放置されることはあり得ないのだが、利益相反のおそれは、利益相反の存在が強く推定されるにもかかわらず、事実として利益相反であると立証されない限り、所詮はおそれにすぎないわけで、問題にされ得ないからであって、なぜ利益相反が証明され得ないのかというと、証明が著しく困難だからである。

証明の困難性、損害の存在の証明である。そもそも損害がなければ利益相反にならないわけで、損害の証明が決定的なのだが、それが極めて難しいのである。このことは、例えば、企業年金の資産運用の受託について考えればわかることである。