勝敗を分けたポイントは守備意識の違い

この試合の勝敗を分けたのは守備面であった。J1リーグ最多得点タイ(前節終了時点31)を誇る札幌に対し、名古屋の守備がそれを上回れるかどうかがポイントなった。

今2023シーズンの名古屋は、リーグ戦において2失点以上した場合の勝利が1度もない。言い換えると、名古屋は勝利のためには無失点もしくは1失点に抑える必要があった。逆に札幌は2得点以上挙げれば、勝利の可能性は高かった。

そのようななかで、名古屋は札幌攻撃陣を止め切ったと言える。GKランゲラックの好セーブもあったが、札幌の攻撃のスピードを上げないために止める動きをしていた。

象徴的なシーンは後半19分の名古屋MF米本拓司のプレーだ。ボールを奪って中盤からスピードをあげていく札幌。札幌のMFルーカス・フェルナンデスがボールを前線へ運ぼうとしたときにチェックに入ったのが米本であった。結果的に米本はイエローカードを受けたが、ここで止めておかなければ名古屋は数的同数の状況で守らなければならず、札幌のチャンスになっていただろうことは間違いない。


名古屋グランパス FWマテウス・カストロ 写真:Getty Images

MOMはFWマテウス・カストロ

同試合のマン・オブ・ザ・マッチ(MOM)には名古屋のFWマテウス・カストロを選出する。選出理由は2つ。試合を決定づける2得点目を挙げたことと、守備での貢献度だ。

マテウスが2得点目を挙げた後半10分のシーンは、もちろん森下のクロスも素晴らしかった。しかし素晴らしいクロスに対し、ニアサイドにあえて走りこまず中で我慢して待っていたこと。そしてクロスに対し、丁寧に合わせてゴールの枠を外さなかったこと。マテウスのポジショニングと技術が詰まった得点であったと言えよう。

守備での貢献度に関しては、特に試合後半である。前線で体を張ってボールをキープしたかと思えば、金子がサイドを侵入してきたときは最終ラインまで戻りボールを奪取した。FW選手のなかで総走行距離10㎞以上となったのは、マテウスのみであった。

得点も挙げ始め、勢いが出てきたマテウス。これから調子は上向いていくであろう。