世間で「貯蓄から投資へ」というスローガンが聞かれるようになってしばらく経つ。すでに世の中は「預貯金の金利で資産が勝手に増えていく」という環境ではない。

こうした社会の変化に伴い、最近、本や雑誌、メディアなどでもお金の特集がしばしば組まれるようになっている。これは、消費者の興味・関心がそちらに移っていることの表れで、筆者はとても良いことだと思っている。 

投資をするにあたって知っておくべき「前提」

現在、マネースクールを運営している筆者のところにも日々、お金に関する相談ごとが寄せられているが、中には答えに窮するような質問も結構ある。特に返答に困るのが「どれを買えば儲かるか?」というものだ。

今さらかもしれないが、投資を行うにあたっては、念頭に置いておいていただきたい「前提」がある。それは何かというと「投資とは元来、値段が上下するもの」ということだ。

投資とは一般に、運用者によって組成された金融商品を対象に行われるものだ。投資対象には事業や会社の株式、不動産、金、骨董、通貨などいろいろなものがあるが、それらは市況に応じて常に価格が上下している。

簡単にいってしまうと、投資商品とは「欲しい」と思う人の方が多ければ価格が上がり、「売りたい」と思う人の方が多ければ価格は下がる。それによって市価が決まっているため、値上がり一辺倒の商品など基本的に存在しない。

これは、外貨取引や仮想通貨などにおいても同様だ。たとえば、何かと話題のBitcoin(ビットコイン)も「いつ買って、いつ売るか」によって、同じ仮想通貨を買っていても損得は大きく分かれる。 

初心者が取り組みやすい「ドルコスト平均法」とは

つまり、投資は他の一般的な消費とは違い、今この場で値段だけを見て「これは割安な商品なのかどうか」という判断はできない。投資をするためには、まず投資しようと思う商品の市場動向や背景、商品に儲かる仕組みがあるのかどうかなどを調べることになる。そして、総合的に判断して「将来性がある」と確信した時点で、初めてお金を投じることができるのだ。

この点が、初心者が投資に参加する際の大きなハードルとなっているのは間違いないだろう。とはいえ、どんな人でも「始めるときは初心者」ということに変わりはない。投資に不慣れな人が「まずはやってみる」という最初の一歩として取り組む方法のひとつに「ドルコスト平均法」が挙げられる。

ドルコスト平均法とは「定期的に一定金額の投資商品を買い増ししていく投資法」のことを指す。ドルコスト平均法を使って商品を購入する場合、たとえば「毎月1万円ずつ商品を購入する」と決めたとすると、購入日に1口1000円だった時は10口購入し、1口1250円だった時は8口購入するというような買い付けを行うことになる。これによって、高い時と安い時の価格差を慣らすことができて、平均的な買い付けが可能になる。

この方法の一番の利点は、市場を見て「上がった」「下がった」と一喜一憂することなく投資を行うことができる点だ。人は誰しも「損をしたくない」という思いがあるが、短期的に結果を見て「今日は上がった」「明日は下がった」といっているようでは、日常の生活にも支障が出かねない。

だから先に自分の予算を決め、価値判断は市場に任せて購入を自動化し、トータルで見た時に「コンスタントに積み立てができている」ということに価値を見いだすのがドルコスト平均法のキモなのだ。 

ドルコスト平均法は「万能ではない」

確かにドルコスト平均法なら安定的で、いろいろ考える時間や手間を節約することができるだろう。月々のキャッシュフローから投資する方には適している。しかし、投資をするという本来の目的からすると、当然ながらデメリットも存在している。

価値が上昇すると見込んでいるものに投資を行う際、初期に一括で大きな金額を投入した方が、複利の効果によって増える速度も量もそれだけ大きくなるものだが、ドルコスト平均法だとこれが生かし切れない。特に、ある程度の資金を持っている場合は、それをわざわざ分割して投入してもあまり意味がない。 
また、そもそも価値が下落し続ける資産の場合は、一括で投入する事に比べれば損失を減らす事が出来るが、利益を得られない。 

大事なのは「長期的視野に立つ」こと

もちろん、投資はギャンブルではないから「一か八か」というような状態は絶対に避けるべきだ。投資の本来の醍醐味を味わうには、リスクの度合いを分散するという考え方も持つべきなのではないだろうか。

これらのことを考え合わせると、闇雲に何でも「ドルコスト平均法がいい」ということにはならない。投資商品を選ぶ際に、お金を投じる方法として、併せて検討すべき選択肢の中のひとつということになる。

投資をする際には、

  1. 現在地と目的地をしっかり把握すること
  2. 各市場での利回りとリスクを想定すること
  3. 時間軸、リスク度、場所を分散させること
  4. どんな情報でも、最後は自分自身で決めること が基本となる。

    これらがそろっていると、日々の経済情勢や変動にも大きく動揺することなく、本業に没頭できるはずだろう。値動きが気になって本業が手につかないというのは、投資ではなく、投機なのだ。

    文・俣野成敏/ZUU online

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