〇貯蓄率 ・4.1%、22年2月以来の高水準だった前月の4.5%から低下。2019年平均の8.8%以下が続くが、1959年のデータ取得以降で3番目の低い伸びとなった2022年6月につけた2.7%から改善基調を継続、過去最低は2005年7月の2.1%。

チャート:個人消費の伸びが鈍化し、貯蓄率を小幅押し上げ

pce23apr_savingr (作成:My Big Apple NY)

〇個人消費支出(PCE)価格指数

Fedの積極的な利上げにも関わらず、前年同月比はPCEとコアそろって市場予想と前月を上回った。

・PCE価格指数は前月比0.4%上昇、市場予想と一致、前月は0.1% ・前年比は4.4%上昇、市場予想の3.9%を下回る、前月は4.2% ・コアPCEデフレーターは前月比0.4%上昇、市場予想の0.3%を上回る、前月は0.3% ・コアPCEの前年比は4.7%上昇、市場予想の4.6%を上回る、前月は4.6%

チャート:4月は小幅ながらインフレの再加速を確認

pce23apr_pce (作成:My Big Apple NY)

――4月の個人消費はガソリンの価格上昇もあって加速しただけでなく、自動車や家具など裁量的支出の分野でも回復を確認しました。3月と5月の米銀破綻があっても、個人消費は堅調そのものです。

個人消費を占う上で注目された米5月ミシガン大学消費者信頼感指数・確報値も59.2と、速報値の57.7から上方修正されました。現況指数も64.9(速報値は64.5.)、期待指数も55.4(速報値は53.4)と、そろって前月以下ながら速報値から上方修正に。とはいえ、ヘッドラインと現況指数は年初来で最低、期待指数は2022年7月以来の低水準でした。やはり、米利上げの影響と長引く高インフレで、個人消費のセンチメントは下向きつつあります。

逆に、1年先インフレ期待は4.2%と速報値の4.5%から下方修正され、前月の4.6%も下回りました。5年先インフレ期待も3.1%と前月の3.0%を超えつつ、速報値の3.2%以下となり、米4月PCEの前年同月比の加速に反し、小幅ながら落ち着きを示しました。少なくとも、6月FOMCで据え置き示唆を与えたパウエルFRB議長にとっては、朗報でしょう。

チャート:米1月ミシガン大消費者信頼感、短期のインフレ期待が著しく改善しセンチメントを押し上げ

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ミシガン大学の消費者調査担当ディレクターのジョアン・シュー氏は結果を受け「過去最低水準に落ち込んだ2022年6月以降の回復の概ね半分打ち消し、2011年の米債務上演問題の交渉が難航した当時と重なる」とのコメントを寄せています。また、今回のセンチメントの低下は3月以降、米銀3行が破綻したうち2つの拠点がある「西部の中間所得層で目立った」と指摘。その上で「年末の経済見通しは17%低下し、長期的見通しも13%低下しており、消費者は景気後退の到来を予想している」との考えを示しました。ただ、足元は安定した収入見通しにより、個人消費が支えられているとも付け加えています。

センチメントが下向き始めたとはいえ、個人消費が堅調でインフレ高止まりする限りFedが据え置きに転じても「タカ派的な一時停止(Hawkish Pause)」にとどまり、「より高く、より長く(higher for longer」金利を維持する蓋然性が高まってきました。マーケットは少なくとも、過度な利下げ期待を着実に巻き戻しつつあります。

編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK –」2023年5月26日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。