鈴木敏文氏がセブンのホールディングス会長だった際、井坂氏はコンビニ事業の社長を長年やっていました。が、鈴木氏は「経営に改革がない」と唐突に井坂氏排除の人事案を出すものの、伊藤雅俊名誉会長がNOを突き付けました。鈴木氏はこれが決め手で辞職します。
伊藤氏と鈴木氏の関係は書籍等を読む限り両名はほぼ水と油の関係だったのですが、伊藤氏が粘り強く我慢をした、それが私のみた関係でした。ですが、伊藤氏はどこまで鈴木氏を一人間として評価したか、これは分からずじまいでした。伊藤氏はその点、井坂氏とは一定の良好な関係を築いていたとみています。故に人事案で「拒否権」を発動したのではないでしょうか?少なくとも現時点では伊藤家にとって井坂氏しか頼る人がいない、という構図にみえます。
とすれば井坂氏が外資の圧力に屈し、イトーヨーカドーを売却しましょう、という話は逆立ちしても起こりえないことになりやしないでしょうか?もっと勘繰れば、百貨店事業の売却が完了すれば次はスーパーマーケット事業だとマスコミや評論家は騒ぐだろう、だったらここは引き伸ばし作戦をして時間を稼いだ方がよい、という戦略にも取れます。
私の上記のシナリオの真偽のほどを確認する術はありません。が、ありうる話だし、仮にそうだとすればセブンほどの企業はこれほど内向き経営だということ、あるいは第2の経営の柱を立てることすらできない一本足経営に傾注せざるを得ない点において経営者としての評点はやっぱり昨日の株主総会での支持率、76.36%でしかないということです。つまり成績でいうとC評点です。
創業家の祖業であるスーパーマーケット事業がサイドラインに追いやられ、コンビニをメインラインに押し出した鈴木氏、そしてその恩恵にあずかった伊藤氏、更には伊藤氏亡き後の大株主創業家としての意向という複雑な関係は「日本的創業家問題」という表現で終わらせて良いのか悩ましいところであります。
セブンは世界に打って出られる素養がある企業なのに頑強な胴体に対して両腕に振り回される経営陣という実に奇妙な構図がまだしばらく続くということでしょうか。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年5月26日の記事より転載させていただきました。