セブン&アイを人間の体に例えると胴体がコンビニ事業、そして両腕が百貨店事業とスーパーマーケット事業とみると非常にわかりやすいと思います。昨日の同社の株主総会で株主提案の井阪隆一社長ら5名の退任要求が通るかどうかが大きく報道されました。この会社の経営は最高益を積み重ねるにもかかわらず、混迷の深さを物語っているとも言えます。それは両腕の百貨店とスーパーマーケットが胴体から離れ、わきが甘くなり、そこを外部の多くの人が突つくことで両腕と胴体が更にバランスしない状況にあるからです。
いったい何がこれほど面倒な事態を引き起こしているのでしょうか?

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セブン&アイについては目先の問題と根底の問題の2面から取り上げる必要があります。
目先の問題は百貨店売却とイトーヨーカドーの経営不振の件です。この2つの問題は共に現経営陣に責任がある、これは明白です。つまりコンビニ事業は出来るけれど事業売却や他の事業の経営は不得手だということを世間にこれほど見せつけた恥はないと思うのです。本質的に経営手腕の問題であります。
西武とそごうの百貨店の売却に関してはフォートレスとの協議が止まっています。止まった理由はフォートレスの後ろにヨドバシカメラがついており、そのために様々な問題解決が前提になっているからです。問題は仮にフォートレスがヨドバシを切る場合、同社がヨドバシに巨額の違約金を払う仕組みが織り込まれているはずで、フォートレスはヨドバシをこの売買で組み込まない訳には行かないのです。
つまり、立ち往生して困っているのはフォートレスなのです。しかもそのフォートレスの親会社はソフトバンクGから中東の会社に代わり、経営方針を含め、行方が分からない状況です。一方でセブン側は交渉遅れは最重要問題ではないはずです。むしろ、コロナ明けで消費が戻っており、百貨店事業は大きく改善している最中であり、次の四半期決算では思った以上に良い百貨店事業の数字が出てくるものと思われます。ただこれはたまたまであって、経営手腕としては評価できないわけです。
ではイトーヨーカドーの件です。井坂社長の説明、ヨーカドーのノウハウがセブンの食材部門に生かされており、イトーヨーカドーとセブンは一体であるというのは苦し紛れというか、表面繕いの理由でしかありません。スーパーマーケット事業は国内で大小乱立、大乱戦が続く中、大が小を飲み込みつつあるのが業界絵図です。ところがヨーカードーは完全に出遅れ、その競争力は喪失しつつある、これが現状です。
本質的にはセブン&アイは誰のものか、でしかないと考えています。セブン&アイ社の主要株主は信託口を除けば伊藤家が約10%を所有する最大株主です。その伊藤家にとりイトーヨーカドーは祖業です。それを誰が守るのか、その契りが伊藤家と井坂社長との間にあるとみています。つまり、「自分が社長である限り、ヨーカドーは守ります」と。