アルゼンチンは自然資源と食糧に恵まれすぎているのが不幸

アルゼンチンの歴史的不幸は自然資源や食糧に恵まれた豊かな国であるということだ。子供が小さい頃からなに不自由なく恵まれた環境の中で育つと物の価値が分からず、まともな人格にならない場合が良くある。アルゼンチンが正にこれである。

アルゼンチンは20世紀初頭にはGDPで世界のトップの国であった。アルゼンチンはヨーロッパの食糧倉庫として発展。しかし、世界恐慌の後のアルゼンチンの経済は後退した。また軍事政権が頻繁に登場。

1946年にペロン将軍が政界に登場して産業の発展を図ったが、企業の国営化を推進して行った。当初はそれで経済は安定して発展するかに見えたが、企業は寡占化し生産性は後退。その一方で労働者を保護する意味で大幅な賃上げを実施。政府の歳出が増加。その一方で貿易取引は疎かになった。

また国内で大半のものが手に入るので、外国からの投資も避けた。自給自足の経済を推進したのである。その傾向は現在も見られる。国の経済規模の割に輸出量が少ないのである。だから、外貨は常に不足する傾向にあり、政府は紙幣を増刷して財政赤字を補う習慣が続いている。財政緊縮は苦手。正に、インフレが高騰する体質になているのである。

自国通貨ペソへの国民の信頼はゼロ

高騰するインフレの前に自国通貨ペソへの国民の信頼はゼロ。国民は貯金は米ドルでしようとする。ところが、政府も外貨が常に不足する傾向にあるので、市民がドルを手に入れるのは容易ではない。だからドルも常に高騰。それがまたインフレを煽っている。

2011年3月の公式レートを見ると1ドル4.04ペソであったのが、2023年3月は207.50ペソとなっている。闇レートだと4.15ペソであったのが、388ペソになっている。今年末には公式レートが398.50ペソ、来年末は862.50ペソまで上昇すると予測されている。(「Estudio del Amo」から引用)。

アルゼンチンの経済予測中央値(REM)によると、今年のインフレは126.4%になる見込みだという。そして2024年は107.5%、2025年は55.5%というインフレ率を挙げた。(5月5日付「アムビト」から引用)。

アルゼンチンのマクリ前大統領までのこの100年余りの年平均インフレは105%。軍事政権が終わって民主化政治になった1989年のインフレは3079%だった。(2018年7月11日付「インフォバエ」から引用)。

今年は大統領選挙が予定されている。アルゼンチンの民主政権を長年維持して来たのは正義党ではあるが、同党出身のアルベルト・フェルナンデス大統領は二期目を目指すことを既に放棄している。不人気で立候補しても当選しないことが明らかになっているからである。