どこにも無駄がない前開きドア

「冷蔵庫みたいだけどカワイイ!」イタリア生まれのシャレた型破り1ドア車・イセッタ【推し車】
乗車時の余裕まではないものの、1ドアは開口部が広く乗り降りが楽そうで、キャンバストップの開放感もあり、出かけるのがちょっと楽しくなりそう(BMW版イセッタ)(画像=『MOBY』より 引用)

第2次世界大戦後の復興途上で、経済的に苦しかった時期のヨーロッパに多かった超小型車の、「バブルカー」や「キャビンスクーター」という通称にこれ以上ないほどふさわしい形をしていたイセッタですが、最大の特徴はドアにあります。

左右の小さなフェンダー上に配されたヘッドランプの間、フロントマスク全体がフロントウィンドウごとガバっと開くようになっており、大きな開口部からベンチシートへのアクセスを邪魔しないよう、ステアリングはシャフトごとドアへついていって曲がる仕組み。

床から生えた小さなオルガン式のペダルを別にすれば、シートへ乗り込むのに遮るものは何もなく…何しろ前から自然に座ったり立ったりできるので、現代のスライドドア式スーパーハイトワゴンより、ヘタすると乗降性は上ではないでしょうか?

唯一心配になるのは「前から突っ込んで事故った場合など、1つしかないドアを開けられない時の脱出方法」ですが、換気口を兼ねたキャンバストップから出入りできるので大丈夫、という触れ込みで、そんなもんだと決め込めば案外平気なものなのでしょう。

BMWを筆頭に、世界各地で生産

「冷蔵庫みたいだけどカワイイ!」イタリア生まれのシャレた型破り1ドア車・イセッタ【推し車】
スライド式で開くサイドウィンドウはBMW時代の改良で、他にリアウィンドウを幌に変えたカブリオレなど遊び心のあるモデルや、ボディ後半部を長い荷台に変えたトラック仕様、「イソ オートカロ」もあった。flickr.com Author:Greg Gjerdingen CC BY-SA 2.0(画像=『MOBY』より 引用)

ただ、戦時中にイソを買収して自動車業界へ進出させたレンツォ・リヴォルタ氏はあまりイセッタの販売に熱心ではなく、公道レース時代の「ミッレ・ミリア」(※)でクラス優勝しても、フィアット500(初代トッポリーノ)より売れず、イソは早々に見切りをつけます。

(※現在はクラシックカーイベントとして開催)

イセッタよりスポーツカーを売りたいリヴォルタ氏がリヴォルタGTを作ろうとしている頃、イセッタの生産・販売権は売りに出され、西ドイツ(当時)のBMWが生産設備ごと購入したのを筆頭に、フランス、スペイン、ブラジルでも生産されました。

中でも熱心だったのがBMWで、大戦で滅茶苦茶になって需要もないのに作ったBMW501が売れずに困っている頃、イセッタやその発展型で後席ドアもある2列シート車、BMW600でしのいだほか、カブリオレや配達用のピックアップ版も作っています。

また、当初はBMW製オートバイ用の250ccエンジン車で2輪免許でも運転できる軽便なクルマとして人気が出たものの、後に日本でミニカー規格が同じ道をたどったように、免許制度の改正で2輪免許での運転ができなくなりました。

そのため、それ以降は排気量を300ccに上げて動力性能を改善し、税金が安い軽自動車のような扱いで販売を継続したほか、横開きのスライディングウィンドウなど、独自の改良を施して、1962年まで生産。

BMWが最後まで作っていたイセッタの生産終了後、同種のクルマはなかなか現れませんでしたが、近年の電動マイクロカーブームに乗ったイセッタそっくりの「マイクロリーノ」が2022年に発売、今後はこのようなドアを持つクルマが他にも販売されるかもしれません。

※この記事内で使用している画像の著作者情報は、公開日時点のものです。

文・MOBY編集部/提供元・MOBY

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