2でも3ドアでもない、冷蔵庫のようなシャレた型破り1ドア車

車体をグルリ取り囲んでみてもドアらしきものは見当たらず、どうやって乗り込んだものかと思案していると、ユーモラスに膨らんだフロントマスクの端にノブが見つかり、それを下にひねるとガチャ…ええっこれがドアだったの?!と驚くマイクロカーが「イセッタ」。
大抵の車は乗り方に多少の差はあれ左右から乗り込むもの…という常識を打ち破り、またあまりに機能的なことから形に差が出にくいためか、近年のEVでイセッタのオマージュ的なものを除けば、おそらく同種のドアを持つクルマはなかなかないのでは?
イタリア生まれの「小さなイソ」

メーカー名から「小さなイソ」を意味する「イセッタ」と名付けられたこのマイクロカーは、一般的にBMW製が有名なのでBMW イセッタと紹介される事も多いのですが、元はイタリアの「イソ」という自動車メーカー製。
もっとも1939年の創業時は冷蔵庫や暖房器具のメーカーでしたが、第2次世界大戦終結後にまずは2輪車へ参入し、スクーターやオートバイ、オート3輪を作ったあと、1953年に4輪参入第1号として発表したのがイセッタです。
スクーターを2台平行に並べ、その間へ大人2人、子供1人が何とか座れるベンチシートと背後の小荷物スペースを設け、シートの頭上スペースを広く取った前後は急な角度で車体の先端と後尾に落ちていくという、いかにも軽そうで無駄のないデザイン。
寸法は日本のミニカーや超小型モビリティ(型式指定車)に近いのですが、わずか236ccのエンジンで2.5人(子供は0.5人扱い)と荷物を乗せての安定した走りと、無理なく乗降させるために考えられる限りの工夫が凝らされています。
一見すると前2輪、後1輪の3輪車にも見えますが、後輪はトレッド(左右タイヤ間)がひどく狭いもののちゃんと左右2輪の4輪車で安定しており、車体も初期型で350kg程度と軽いため、ノスタルジックカーイベントへ高速道路で自走するユーザーだっているほどです。