しかし、技術環境の変化がウーバーを生んだと考えることは正しくない。そうではなく、既存のタクシー産業の構造が矛盾に満ちていて、顧客の利益を損なっているだけでなく、産業の発展も阻害しているという事実の分析に基づき、タクシー産業のあるべき姿を理論的に構想することで必要となる技術要件が明らかになっていって、その高度技術の利用費用が閾値を超えて低廉となったとき、一気に事業として花開いたということである。
ここでタクシー産業について述べたことは、情報技術利用のあり方、利益相反を回避する利益誘因構造の設計、働く人が自律的に活動する喜びなど、全ての産業に共通した課題であり、普遍的に適用できることである。問題は、タクシー産業の場合は成果の定義と測定が容易であるのに対して、一般的には成果の定義と測定が難しいことである。しかし、それは技術的なことにすぎないわけだから、必ず何らかの解法があるはずである。
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森本 紀行 HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長 HC公式ウェブサイト:fromHC twitter:nmorimoto_HC facebook:森本 紀行