先の記事「厚生労働省のサイトはボロボロ:マイナンバーカードの保険証利用」で、障害者や高齢者の閲覧への対応(アクセシビリティ)と共に、重要な点から順番に説明するといった閲覧者の理解を促進する原則に沿っていないと指摘した。

閲覧者は必要な情報を取得するためにサイトを開く。必要な情報が入手できる有効性と、必要な情報を容易に入手できる効率性が満たされると、閲覧者はそのサイトに満足する。有効性・効率性・満足度を総称してユーザビリティといい、サイトは閲覧者のユーザビリティを高めるように構築されている必要がある。

どうしたら公共サイトのユーザビリティが高められるだろうか。先行した米国の事例を紹介する。

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2010年に施行された平易言語法Plan Language Actは、政府の情報およびサービスへの国民のアクセスを強化するために、国民一般に向けて発行される政府文書は明確に書くように(must be written clearly)求める。そのために、「平易な記述(Plain writing)」の原則、すなわち明確・簡潔・よく整理されているなどの原則に従って文書を作成するように要求している。

平易言語法に従って、行政管理予算局(Office of Management and Budget)がガイドラインFederal Plain Language Guidelinesを発行している。

ガイドラインが掲げる第一原則は「聴衆について考えよ」である。聴衆の知識レベルを考慮に入れ聴衆が知っていて快適に感じる言葉を使用すること。どんな聴衆か、勝手に推測したり、仮定したりしない。

平易な言語、平易な記述を「やさしく書くこと」と勘違いする人がいる。しかし、聴衆が研究者であれば研究者向けの、一般国民であれば一般国民向けの記述となるので、必ずしもやさしい文章になるわけではない。