地球儀を俯瞰してみると分かります。最大の影響力があるアメリカ、中国は自国の便益を中心と考えます。欧州は一枚岩のように見えますが、歴史的に見てあれほど民族的な潜在問題を抱えたところはありません。全てはケースバイケースで判断です。

グローバルサウスという括りで今回、インド、ブラジルが呼ばれましたが、すっかり記憶の忘却になったBRICsの4つのうちの2か国なのです。そもそもインドはどちらか一方に全面的につくという発想があまりありません。東京裁判でインド人のパール判事だけが正当な判断をしたとする見解がありますが、要は迎合しない国民性なのです。

ブラジルも同様です。行けば分かりますが、南米はブラジルのみならず全般的に歴史認識と地政学を含め、北米や欧州との明白な距離感があります。今回、中東からの参加はありませんでしたが、彼らの存在感も確実に高まっており、それぞれのグループがそれぞれの便益のために声を上げる非常に複雑な社会形成が今日の姿です。こう見ると今の世界の統率はいくつものグルーピング同士の調整が重要になってくると考えています。

この中で日本は確かにG7メンバーで西側諸国の一角ですが、中国、韓国、ロシアの隣国であり東南アジア諸国のリーダーシップを取る重要なポジションにあります。欧州とは地理的にも宗教的にも民族的にも遠いこともあり、必要以上の配慮もいらない点は特筆すべき点であります。

岸田氏と安倍氏を比べるのはどうかと思いますが、双方とも外交に特徴があります。ただ安倍氏が目に見えて成果を出せた外交が対アメリカだった半面、プーチン氏との交渉はあれだけ会談したにもかかわらず、微動だにしなかったのです。岸田氏はまた外交途上ですが、実を言うと外務大臣をやっていた時から密かに近年の外相では高い評価をしていました。(猛反対する保守系の人はいるのは承知の上で書いています。外務省の施策は近代外交史上の思想に委ねるところがあり、それは市井の考えとは異にすることもあるのです。)

安倍氏は個別の国家元首とやり取りするのを得手としたのに対し、岸田氏は国家としての外交を進めているように見えるのです。そこに大きな違いを感じます。それをベースに考えれば今回の一連のイベントは外交に長けた岸田ワールドそのものであったと思います。偉大なるオーケストラの指揮者という表現が一番おさまりがいいかもしれません。

「岸田ぁー!」という声があるのは昨日の当ブログの「異見の話」の通りでそれには一定の聞く耳は持つのでしょう。が、信念を持っての外交という意味では個人的には岸田氏のスタンスは大いに賞賛できるものだったと思います。これをステップに次の高みに上がってもらいたいと思います。

では今日はこのぐらいで。

編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年5月22日の記事より転載させていただきました。