総務会長が認めれば所属議員はオブザーバーとして参加し発言も許される、というのが自民党総務会運営のルールであり、平成4年の政治改革法案審議の際、我々当選1、2回の政治改革法案に賛成の立場の若手議員は大挙して総務会に出席して発言しました。
当時の総務会のメンバーはほとんどが大臣経験者のベテラン揃い、総務会長は佐藤孝行先生、幹事長は梶山静六先生という、我々若手議員からすれば足が震えるような威圧感の中で、それでも必死に発言したものでした。
今は平場の部会で発言するだけ発言して、反対している人々に己の存在を示せば後は執行部の意向に従うという考えなのか、「雉も鳴かずば撃たれまい」ということなのか、いずれにせよ随分と様変わりしたものです。自民党から自由な議論の気概が失われつつあるようで、強い危惧を抱きます。
16日の自民党安全保障調査会・国防部会で、1月に発生した護衛艦「いなづま」の事故についての報告が防衛装備庁と海上幕僚監部からなされました。
にわかには信じられないようなヒューマンエラーの数々により事故が発生したこと、補修部品の調達に時間を要するため修理に4年はかかるとの報告に、出席議員の多くが愕然とし、このようなヒューマンエラーが連鎖的に起こるのは「いなづま」だけの問題ではなく、海上自衛隊全体に構造的な原因があるのではないか、部品の調達に長大な時間を要するようなことで果たして継戦能力は維持されるのか等々、様々な意見や懸念が出されましたが、これを報道したメディアはありませんでした。
「いなづま」が座礁して動けないままになっている映像は何度も放映されましたが、このような本質的な問題が報道されないのは「絵にならないので視聴率が取れない」からなのか、そもそも問題意識が欠如しているからなのか。これは軍事専門誌も同様で、これは報道すれば自衛隊との関係が悪くなって情報がもらえなくなることを恐れてのことなのか。
いざ有事となり、様々な問題点が露呈して初めて、国民はこの恐ろしさに気付くのでしょうが、その時にはもう既に多くの犠牲が生じて国家が危機に瀕していることでしょう。改善は焦眉の急です。
ドックでの定期点検終了後、直ちにテスト航海に出航する予定となっていたため、年末のドック入りの前に「事前研究会」という出航前の打ち合わせが義務付けられていたのですが、乗組員の年末年始の休暇取得を優先してこれを行わなかったとのことです。士気や体力の維持のために十分な休養を取ることは必要ですが、休暇の取得が本来の業務、ましてや安全確認作業に優先するなどということなど決してあって良いはずがありません。
艦艇乗組員の勤務環境の実態を早急に調査し、必要に応じて見直さねばなりません。自衛官も国家の行政組織の一員たる(特別職)国家公務員であるから処遇も規律も公務員に準ずるという体制は是か非か、という根本問題から政治が目を背けてきたことのツケは、いつか必ず国民に返ってくるのです。
そして、都合の良い情報を優先し、そうでない情報を等閑視すれば、国も組織も滅びます。昭和16年12月の日米開戦前夜、この戦争は絶対にしてはならない旨の至急電を30通も打電したにもかかわらず政府にこれを黙殺された駐スウェーデン日本国武官・小野寺信の映像(「日米開戦不可ナリ小野寺大佐発至急電」NHK特集・1985年)を見返して、改めて強くそう思いました。
広島サミットが開催され、岸田総理とバイデン大統領の会談も行われました。核についてNPT体制を強化するのであれば、ウクライナがNPT体制の維持のために核兵器を放棄する際に合意された「ブダペスト覚書」が何故履行されなかったのかも検証されなければならないのは論理として必然でしょう。なぜなら、ブダペスト覚書の不履行が結果として核拡散を助長することになっているからです。
次にわが国が考えなければならない問題は、北東アジア地域における軍事力のリバランスのためのミサイル配備についてです。米軍の日本配備か、日本独自のミサイル配備か、あるいは両方か。韓国の核保有の可能性も視野に入れた議論が必要です。
広島の平和記念資料館を視て、核保有国首脳、とりわけ原爆投下の当事国であるアメリカのバイデン大統領はどのような感慨を抱くのでしょう。
原爆投下には直接関与しなかったものの、東京をはじめとする日本の主要都市に対する無差別爆撃を立案・実行して多くの無辜の民を虐殺したカーチス・ルメイ爆撃集団司令官は、その後1964年に日本政府から、航空自衛隊の創設に多大の功績があったとの理由で勲一等旭日大綬章を授与されていますが、昭和天皇はこの時、親授をなさらなかったとのことです。昭和天皇の大御心は知る由もありませんが、それを推測するとき、恐懼にたえません。