輸血用血液製剤の輸送方法とは

 そんな不採算路線の廃止議論をめぐって一部で指摘されているのが、輸血用血液製剤の輸送に支障が出るのではないかという懸念だ。現在、JR北海道の一部列車は輸血用血液製剤を輸送しており、もし仮に路線が廃止になりバスなどの代替手段に切り替わると、大雪や自然災害で道路が使えなくなった場合に血液の供給が滞ってしまうという声も聞かれる。鉄道ジャーナリストの梅原淳氏はいう。

「輸血用血液製剤は、輸血された地域にある日本赤十字社の拠点となる血液センターで調製された後、ブロックごとに設置された血液センターに運ばれます。ここまでの輸送で採用される交通機関は、離島を除けばほぼすべてが自動車と考えてよいでしょう。血液センターに届けられた輸血用血液製剤は、病院側の要請に基づいて配送されます。

 北海道の場合、輸血用血液製剤の調製は札幌市内にある日本赤十字社北海道ブロック血液センターで実施されるとのことです。そして調製済みの輸血用血液製剤は北海道赤十字血液センター(札幌市)、それから厚別出張所、岩見沢出張所、室蘭出張所、苫小牧出張所、旭川事業所、北見出張所、稚内出張所、釧路事業所、帯広出張所、函館事業所の各供給施設に日本赤十字社の自動車を用いて運ばれます。

 各供給施設から病院への配送方法は3通りあり、一つは1日3便程度の定期配送、2番目は臨時配送、3番目は緊急配送です。定期配送と緊急配送は日本赤十字社の自動車を用いて行っており、緊急配送では赤色警告灯の点灯とサイレンの吹鳴を行った緊急走行によって届けられます。

 臨時配送では日本赤十字社の自動車のほか、宅配業者、公共交通機関、主にバスを利用して輸送されることがあり、JR北海道も必要に応じて旅客列車に載せての輸送を請け負っているのです。また、各供給施設で輸血用血液製剤が不足した場合は、日本赤十字社北海道ブロック血液センターから各供給施設への緊急需給調整を実施しなければならないので、この場合も特急列車が利用できるのであれば載せるようにしています」

 では、路線廃止によって輸送に支障が生じる懸念はあるのだろうか。

「以上からもわかるように、輸血用血液製剤輸送でJR北海道が果たしている割合は高くありません。函館事業所における少々古い2009年度の実績でも、緊急需給調整を実施しての輸送が184件あったうち、JR北海道が担当したのは4件であったそうです。JR北海道が同じ年度に輸送した輸血用血液製剤の数量や売上高はわかりません。輸血用血液製剤を含む小荷物輸送について紹介しますと、輸送数量は1万個で、1174万7000円の売上を計上しておりました。最新の統計となる2020年度では輸送数量が減って2000個、売上高は225万2000円です。

 結論を言いますと、仮にJR北海道が路線を廃止にしたり、特急列車の運転を打ち切ったとしても輸血用血液製剤の輸送にはほとんど影響を及ぼさないでしょう。輸送手段の一つが姿を消すにすぎず、他の交通機関を使用しても十分に運べるからです」

(文=Business Journal編集部、協力=梅原淳/鉄道ジャーナリスト)

提供元・Business Journal

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