経営危機が続くJR北海道。路線廃止の議論も進むなか、ローカル線で輸血用血液製剤を運搬しているため、路線廃止になると道内へその供給が滞る懸念があるとの指摘も一部ではみられる。果たして、実際にそのようなリスクは存在するのか。専門家に聞いた――。

 経営難が叫ばれて久しいJR北海道。直近の2023年3月期決算は、売上高はコロナ禍の反動もあり前期比21.2%増の1337億円となった一方、最終的なもうけを示す純損益は赤字額が前期の10億円から164億円へ拡大。営業損益は572億円の赤字となり、24年連続の営業赤字となっている。

 同社を事実支えているのが、国による支援だ。国は2011年以降、JR北海道に対し助成金の交付などの支援を行ってきたが、20年には同年度までとなっていた支援の期限の延長を決定。助成金の交付金等を30年度まで延長するのに加え、23年度まで1302億円を支援することを決めた。JR北海道の経営安定基金の下支えを実施し、青函トンネル更新費の支援や、金融機関から行う資金調達にかかわる利子の補給、設備投資に必要な資金の出資、不要土地の取引に関する税制面での特例措置適用など、まさに国によるあの手この手の支援によって支えられている。

 そんな同社を悩ませるのが、不採算路線の存廃問題だ。同社は16年に「当社単独では維持することが困難な線区」を公表。以降、札沼線・北海道医療大学―新十津川間、日高本線・鵡川―様似間などが廃止となり、今年3月末には留萌線・石狩沼田―留萌間が廃止に。同路線・深川―石狩沼田間の26年3月末限りでの廃止、JR根室線・富良野―新得間の24年3月末での廃止が決まっている。

 JR北海道の綿貫泰之社長は22年7月20日付日本経済新聞記事のインタビューで「黄線区の廃止は頭に全くない」と語っているが、同年12月12日付「日経ビジネス」ウェブ版の記事では「ローカル線問題はもっと早く提起すべきだった」としており、ローカル線の存廃を大きな経営課題ととらえている様子がうかがえる。

「道内のほとんどの区間が営業赤字で、採算がまったく合わないローカル線を多数抱えているのに加え、巨費を投じた北海道新幹線も乗車率が惨憺たる状況で収益化は見込めない。資金不足を理由に自然災害で使えなくなった線路や橋を補修せず、放置して事実上の廃線にしているほど。国からの支援でやっと生きながらえているのが現状で、国から支援を受けている手前もあり、経営改善のために不採算路線の問題にメスを入れないということはあり得ない。各路線の地元自治体との協議は今後も続けられる」(地元紙記者)