ギャンブル関連企業とクラブ財政

この調査結果に対する世間の反応の中には「選手がギャンブル関連企業のユニフォームを着ているのは好きではないが、これ(ギャンブル関連スポンサー禁止令)によって、そもそも少ない収入源が更に制限されると、クラブの経済状況が悪化するだろう」という意見もある。

近年トップ5、6にランクされているマンチェスター・シティやアーセナルなどのクラブは、ギャンブル関連企業とはスポンサー契約せず、他業種とタッグを組む傾向にある。そこから見えてくるのは、やはり「クラブ資産の差」だ。大方の世論通り、財政面が厳しいクラブは、高収益のギャンブル関連スポンサーに支えられているのも事実。今後それらのスポンサーと契約を終了し、新たに別業種と契約を結んだ場合、これまでと同等の収入を得るのは至難の業だろう。

「ギャンブル関連スポンサー禁止令」に至る背景の根本には、英国政府の「ギャンブル法改正計画」がある。その動きの中で再注目されたのが「サッカー選手のロールモデル化」だ。若者の見本となる存在でもあるプレミアリーグの選手達だが、彼らの活躍と共に目に飛び込んで来るのが胸にプリントされたギャンブル関連企業名というのは複雑な状況である。その結果、ギャンブル法の改正にあわせ、リーグは禁止令を投じたという訳だ。


元ニューカッスル・ユナイテッド FWデイビッド・ケリー 写真:Getty Images

ユニフォームに相応しい企業とは?

今後、ギャンブル関連スポンサーの代わりに地域クラブを支える期待の星として、ロールモデルである選手たちが着用するユニフォームには、一体どんなスポンサーが相応しいのだろう。個人的には、各クラブと同じ拠点である地元企業が相応しいと考えている。

過去の事例をあげると、プレミアリーグ創設時の1992/93シーズン、ニューカッスル・ユナイテッドのユニフォームには、クラブの本拠地ニューカッスル・アポン・タインで有名な「ニューカッスル・ブラウンエール」というビールの醸造所がスポンサー契約を結んでいた。胸に青い星が配されたそのユニフォームを、当時のクラブサポーターは愛着を持って「ブルースター」と呼び、現在でも非常に人気の高いレトロシャツとなっている。

ギャンブル関連スポンサーのような国際的大企業と地元企業を比較すると、資本の部分で雲泥の差があることは事実。だが、地元企業にしかできないフットワークの軽さを利点として、様々なアイデアで資金調達を行うことは不可能ではないはずだ。また、地元企業だからこそ、サポーターや選手達との距離感を縮め、強固な信頼関係を築き上げることも期待できる。

あくまでも理想だが、例えて言うなら日本における地産地消の様なスタイルで、プレミアリーグを地元の人々により一層楽しんでもらいたい。そのために、地元企業が地元クラブを支え育てることが出来たら最高だ。サッカークラブのユニフォームには、やはり、それぞれの地元企業スポンサーが相応しいのかもしれない。