チャート:組成額は2021年Q1以来の水準に減少
(作成;My Big Apple NY)
新規の自動車ローン組成のうち信用スコア720点以上の高信用層は53.8%と、前期の49.7%を上回り過去最高だった。逆に信用スコア620点以下の割合は14.5%と過去最低だった。なお、2004年以降でサブプライム層のシェア最高は2006年4~6月期につけた31.8%となる。信用スコア中央値は今回720.5点と、こちらも過去最高だった。
チャート:自動車ローン組成額のシェア、720点以上は過去最高
(作成:My Big Apple NY)
金融不安や融資基準の厳格化を受け、高信用力をもつ消費者への融資に傾いた可能性を示唆する。
チャート:米銀の融資担当者調査では、消費者向けローンの融資基準は厳格化が進む
(作成:My Big Apple NY)
〇クレジットカード
クレジットカード→9,860億ドル(前期比横ばい、前年比1,450億ドル増) →ローン残高は、年末商戦明けの季節的要因もあって横ばいとなり増加トレンドを3期で止めた。
〇学生ローン
学生ローン→1兆6,040億ドル(前期比90億ドル増、前年比140億ドル増) →ローン残高は、2期連続で過去最高
〇延滞率
全体の延滞率は2.6%と、過去最低だった前期の2.5%を小幅に上回る2.6%だった。
しかし、それぞれのローン別でみると、返済遅延が広がりつつある。新規の延滞率はクレジットカードと学生ローンを除き上昇した。クレジットカードは、年末商戦明けのQ1にローン残高が減少し延滞率が低下する傾向がある。
・住宅ローン→6.88%、2019年Q4以来高水準 ・ホームエクイティローン→6.51%、2020Q1以来の高水準 ・自動車ローン→2.43%、2020年Q3以来の高水準 ・クレジットカードローン→1.94%、1年ぶりの低水準 ・学生ローン→1.06%と、1年ぶりの低水準(政府機関が保有する学生ローンに支払い猶予が与えられた結果(民間保有の学生ローンは対象外)、延滞率が2020年3月以降、劇的に改善傾向にある)
チャート:新規の延滞率、クレジットカードと学生ローン以外は軒並み上昇
(作成:My Big Apple NY)
Fedは2022年3月以降、FF金利誘導目標を5%引き上げてきた。足元では、Fedの狙い通りゆるやかながらインフレ上昇ペースがゆるみ、需要も落ち着き始めている。さらに足元はシリコンバレー銀行など3行が破綻し、融資基準は厳格化してきた。その結果、住宅ローンや自動車ローンの組成額はそれぞれ2014年Q2以来、2021年Q1以来の水準に減少(住宅は在庫不足による価格高止まりも一因)。
一方で、インフレ高止まりを背景に新規の延滞率も上昇している。米4月小売売上高は堅調だったが、貯蓄率は直近で改善しつつも長期的にみると低水準で裁量的支出の余地は狭まっており、労働市場次第で個人消費が減速ペースが速まるリスクをはらむ。
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK –」2023年5月17日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。