客より店員のほうが多い…ヤマダデンキ、店舗が閑散でも売上1兆円超で業績好調の謎
(画像=ヤマダデンキのHPより、『Business Journal』より 引用)

 大手家電量販店のヤマダデンキ。ターミナル駅付近や繁華街、郊外などいたる場所に大規模な店舗を構えているが、店内に客が数名しかおらず店員の数のほうが多い光景をよく目にするという声は、以前からよく聞かれる。

 業界各社の2023年3月期第3四半期の累計売上高を比較すると、ヤマダデンキを運営するヤマダホールディングス(HD)は1兆1773億円で、業界2位のエディオンの5385億円を大きく上回っている。22年3月期の連結売上高は1兆6194億円、営業利益は657億円と業績は好調そのもの。それにもかかわらず、閑古鳥が鳴いている状況にはどういった理由が隠されているのだろうか。流通ジャーナリストの西川立一氏に、ヤマダデンキの来店客数の実態や、どういった仕組みで利益を出しているのかについて聞いた。

店員が多いようでも実は人件費はさほどかかっていない

「平日はほとんど利用者がいない」という指摘も聞かれるが、的を射たものなのだろうか。

「確かにヤマダデンキの店舗、とりわけ郊外エリアに出店しているロードサイド店舗には、平日の昼間は閑散とした光景がよく見られると思いますね」(西川氏)

 では、なぜそのような事態に陥っているのか、そしてそんな状態でもなぜヤマダデンキが苦境に陥っていないのかが気になってくる。

「非常にシンプルな答えなのですが、ヤマダデンキの郊外型店舗は土日祝日が主戦場なのです。なぜ、土日祝日なのかですが、毎日の食材をスーパーで買うのとは勝手が違い、家電量販店での買い物は多くの家庭にとって大きな買い物です。そのため、たいていは家族間でよく話し合い、現物を吟味したうえで購入するというケースが多くなりますので、必然的に家族の予定が合いやすい土日祝日に来客が集中するわけです。また、郊外型店舗は車での来店がメインなので、車を運転できる家族の予定が空きやすいのが土日祝日という事情もあると思います」(同)

 しかし、平日に店舗を営業しても売上があまりなく、土日祝日の売上頼みになっているというのは、経営的にまずいのではないだろうか。

「それは心配いらないでしょう。家電量販店の収益の大部分を占めているのは、テレビやステレオ、冷蔵庫、洗濯機、電子レンジといった値段の張る商品です。そのため平日の売上がほとんどなかったとしても、土日祝日に高額な家電を買う上客を捕まえられればいいわけです。もちろん、こうした上客を捕まえるためには店舗戦略も重要です。よく家電量販店の1階にはスマホやタブレット、さらにはドライヤーや電動歯ブラシといったいわゆる小物家電が数多く陳列されていますが、これは利用者の注目度や利用率の高い品物を、来店してすぐ目につくところに置くことで店舗に誘い込んでいるのです。

 テレビや白物家電は、すでに持っている物が壊れたから買いに来るケースと、店頭で最新のモデルを見たことで買い替えを決意するケースがあると思いますが、後者のケースにおいては、まず『最新の家電に食いついてもらう』必要があります。だからこそ、目につくところに小物家電を置き、店内を見てもらうきっかけをつくっているのです」(同)

 とは言え平日に店舗を営業することによって、客よりも店員が多いといった状態に陥るほどとなると、人件費がかさむのではないか。

「実は家電量販店の店員と一口にいっても、その家電量販店の自社の社員だけでなく、家電メーカーから派遣されてきた販売員も多くの割合を占めているんです。ですから、利用者の少ない平日は人件費のかかる自社の社員の数は減らし、メーカーが派遣する販売員のほうが多くいるため、ヤマデデンキ自体の平日の人件費は、過剰にかかっているわけではありません」(同)