「情報を単純化する」というのは、非常に難しいことです。そもそも情報を本質的にしっかり理解していなければ、本質的に重要な幹となる部分と、それほどでもない枝葉の区別がつかないため、情報の整理ができないからです。
20世紀を代表する物理学者のアインシュタインは、次のような言葉を残しています。
「6歳の子どもに説明できなければ、理解したとは言えない」
この言葉で思い出すのは、ジャーナリストの池上彰さんです。池上さんのわかりやすいニュース解説は定評がありますが、もともと池上さんは、NHKの『週刊こどもニュース』という番組に、ニュースに詳しいお父さんという役で出演していました。
アインシュタインの言葉のように、まさに6歳の子どもでもわかるようにニュース解説をしていた池上さんは、NHKの職員だった当時、年間300冊以上の本を読んでいたそうです。この圧倒的な読書量と、それによって得られた情報を正しく理解しているからこそ、子どもにもわかるニュース解説ができたのです。
池上さんのように「読んだ内容を人にわかりやすく説明するのだ」とアウトプットを意識していると、理解力を高めることができるでしょう。そのコツは「要するに、ここで重要なことは何なのだろう」と常に考えながら読むことです。「要するに」を意識することで、焦点を絞ることが可能になり、何が幹で何が枝葉なのか、おのずと見えてきます。
相手に合わせた説明をするそして「わかりやすい説明」のもうひとつのポイントは、相手に合わせた説明をするということです。
アインシュタインの言葉には「6歳でもわかるように説明する」とありますが、いつでも必ずそうしなくてはいけないということではありません。説明をしようとする相手のレベルに合わせて、情報量を絞り込まない方がわかりやすい場合もあります。
話す相手によって、同じことを伝えるにしても、話の粒度が違うことは、ごく普通にあります。例えば、マーケティングの仕事をしている人が、学校の同窓会のようなさまざまなバックボーンの人たちが集まっている場で自己紹介をするのであれば、「○○社で、マーケティングをしています。最近は△△という仕事をしました」程度の説明ですませるでしょうが、同業者の集まりであれば「○○社で、MAを活用したリードナーチャリングを担当しています」など、詳細なことを話すでしょう。
人にわかりやすい説明をするというのは、これと同じことです。話そうとしていることについて、相手に知見のある場合には、複雑な話はそのまま話した方が伝わりやすいということもあります。
このように、本を読むときには、説明する相手を想定しながら読んでみてください。「ここはもう少し噛み砕いた方がいいな」「この部分は業界では常識だから、省略してもいいだろう」など考えながら読むと、本に書かれていることが「自分事」になり、理解度は大きく変わってくるでしょう。
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金川 顕教(かながわ・あきのり) 公認会計士・税理士 公認会計士、税理士、『YouTube図書館』運営、作家。 三重県生まれ、立命館大学卒業。大学在学中に公認会計士試験に合格し、世界一の規模を誇る会計事務所デロイト・トウシュ・トーマツグループでの勤務を経て独立。現在、会社7社のオーナー業の傍ら、起業家育成プロデュース、出版プロデュースを行い、1人でも多くの人に読書の大切さを伝えるため、『YouTube図書館』の運営及び執筆活動を開始。『YouTube図書館』では、毎日更新、年間365本の書籍解説動画をアップし、これまでに解説した書籍は1,640冊以上、チャンネル登録者は132,329人、動画再生数は2,656万回を突破(2023年1月現在)。執筆活動では、ビジネス書、自己啓発書、小説など多岐にわたるジャンルでベストセラーを連発し、累計部数は55万部以上。
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編集部より:この記事は「シェアーズカフェ・オンライン」2023年5月11日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はシェアーズカフェ・オンラインをご覧ください。