ウクライナ問題は必ずしも西側諸国の連帯だけを緊密にしたわけではありません。外交好手、中国は秦剛外相がパキスタンで同国、及びアフガニスタンと「一帯一路」の強化を約束し、関係強化を目指すと発表しました。アフガニスタンは旧ソ連、アメリカという超大国すら抑え込めず、莫大なる損失と実質的敗北に至らせた世界でも例を見ない国家です。今般、中国がアフガニスタンに接近することで「三度目の正直」になるのか、「二度あることは三度ある」になるのかの試金石となりますが、厳しい試練に立たされているパキスタン、アフガニスタンを取り込もうとする中国の野心もすさまじいものがあります。
一方の欧州はNATOの強化を目指しますが、英国がEUから離れ、ロシア国境に近い国家とそうではない国家で「感性の温度差」が生まれています。個人的には一枚岩ではないという感じがします。ウクライナもNATOに耳を傾けるというよりアメリカと歩調を合わせる方向に着実に進みつつあります。
ゼレンスキー氏の世界に向けた支援要請の声はあまり聞かれなくなりました。なぜでしょうか?一時は名スピーチともいわれたのですが、私は当初からあまり聞きたくなかった、それが本音です。なぜなら彼の訴えは武器や支援要請を通じて世界を戦争に巻き込もうとするようにも聞こえるのです。ワシントンポストは同大統領がパイプライン爆破やロシア領内攻撃を示唆する情報が流出したと報じています。同大統領は否定しているようですが、いずれ事実は見えてくるでしょう。
ウクライナ問題は10年後か20年後にどう評価されるか気になっていますが、個人的には国境を挟んだ地域闘争だったで落ち着くのではないかと思うのです。ロシアの言い分であるクリミア半島へのアクセスと東部ウクライナに住むロシア人の保護を目指す戦いです。一時は第三次世界大戦になるという論調も見られましたが、今ではほとんど聞かなくなりました。そもそも世界大戦という表現を使うなら世界を二分化して敵と味方に分かれる話ですが、ウクライナ問題でロシアに味方して一緒にドンパチしようとする国家は私の知る限りではありません。現時点ではこれは地域紛争かと思います。
いずれにせよ、世界はこの現実を見て78年前のあの悲惨な出来事を思い起こさずにはいられなかったのです。故に独立独歩ではなく、同盟を通じて手をしっかりつなぎ、お互いに守ろうという機運が生まれた、これがNATOへのフィンランドやスウェーデンの加盟の動き、日韓の今日の危機感であり、中国の焦りでもあるのではないでしょうか?
国際協調に唯一不安があるとすればアメリカの行方です。国内が分断化され、政治家がエキストリームな行動をとり、政治家が一部の熱狂的支持者との一体化を図る構図は明らかに奇妙で、不平等で、さまよえる国家にすら見えます。問題はアメリカは今まで王者として誰の言うことも聞かなかった、故にこの10年以上、じわじわと蝕むアメリカ病に誰も意見を挟むことが出来なかった、これが事実ではないでしょうか?
その意味からもアメリカが目覚め、一枚岩になることがもっとも重要な直近の課題でありました。これが当面期待できない以上、アメリカ無き国際協調をどう作り上げるかが喫緊の課題となるのでしょう。
その上、ウクライナ問題がアジアの目覚めをより強調させることになったのが今、見られるアジアの新次元ではないかと思うのです。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年5月16日の記事より転載させていただきました。