日本の労働組合は経営者の為の組合

日本はバブル崩壊後に見られた現象として、企業が景気低迷にある時に従業員を削減するのではなく、雇用を維持しながら賃金を下げたりして経営を維持することに組合が協力する姿勢を示すというケースがあった。欧米ではこのような場合、経営者は人員削減をするのが当然の策となっている。日本の労働組合は経営者と社員への思いやりから給与を下げ、首切りを避けることに同意するようになるのである。

スペインではこのような策が受け入れられるのは稀である。大量の人員削減を大手企業は惜しむことなく実行する。それが企業を来るべき危機から救う方法だからである。共死には絶対しない。だからその犠牲者は経営者ではなく常に従業員となる。その場合の組合の仕事は解雇される従業員の年金受給年齢までの解雇後の賠償支給額の交渉をすることである。

例えば、スペインの昨年12月のrtevデジタル紙によると、2021年にスペインの銀行が解雇した行員は1万8627人と報じている。その内の大手4行が1万6364人を解雇している。銀行業務がデジタル化しており、またデジタル銀行も従来の銀行の市場を喰いつつあるということなのである。

その影響で支店数も大幅に削減している。一般に住民が3000人以下の自治体から支店を撤退させるというのが大手銀行の方針となっている。支店が撤退した自治体には支店があった場所にATMがあるだけとなっている。或いは、定期的に銀行バスが巡回して行く方法などが取られている。それは市民にとっては不便であるが、我慢せねばならない。

このような大量解雇に経営者側からの顧客への思いやりの精神などは存在しない。銀行が過当競争に勝ち抜いて行くには行員の大量解雇しかないのである。それはどの業界の企業でも同様である。

日本は思いやりの精神が経済発展を阻んでいる

この思いやりの精神が日本の経済全体の発展を阻んでいる。日本の人口はこれからさらに減少して行く。それは労働人口の減少を意味する。その一方で、社会福祉の受給者である高齢者はますます増えて行く。このような社会がこれから発展して行くことは不可能である。これまで日本のGDPを世界で3位に維持できたのは、日本の人口が多いからである。

GDPは消費+投資+政府支出+貿易収支の総計である。日本はGDPで世界ラニングで3位を維持できているのも結局は人口が多いからである。多い分、その消費も大きい。これがGDPを高い位置に維持できている理由だ。断っておくが、GDPは飽くまで経済規模から観たもので、生活の物質的そして精神的な豊かさというのはGDPでは表せない。だから、GDPだけ観て豊かな国かそうでない国かは実際には判断できない。しかし、現状の経済学では豊さを示すのはGDPを基準にしている。

日本は人口がこれから減少して行く事実を踏まえて、これから高い消費を維持して行くには生産性を高めて労働者が高い収入を得るようにさせること以外に手段はない。ところが、問題は日本の生産性、特に労働生産性が非常に低いということなのである。2021年の統計を見ると、日本は世界で一人当たりの労働生産性は45位にランキングされている。

G7の中では一番低く、スペイン、ギリシャ、韓国などよりも低い数値になっている。これはOECD加盟国38カ国の中で29位という低いレベルになっている。

そこで消費を伸ばす意味で昇給を当然のこととして取り組んで行かねばならない。ところが前述したように日本は思いやりの精神が影響して、従業員や労働組合が昇給を経営者に要求し難い社会構造になっている。あたかも社会主義国家が国民に低所得を押し付けている現象を日本はおとなしい国民自身がそのようにさせているのである。

この問題を解決して、昇給を当然のこととし、それに応える為にも経営者の方では設備投資などをして昇給に応えられるだけの利益を上げる必要に迫られるようにさせねばならない。このようにして、日本経済を成長させていく必要がある。現状のおとなしい従業員や労働組合の姿勢に甘んじて経営者は積極的に投資もしない。またその投資先を外国に向けているという傾向にある。

スペインの大手銀行は1,200支店を閉鎖し、6,000人以上の従業員を容赦なく削減する