20年以上も昇給の無い日本

統計によると、2020年だと日本の平均年収はスペイン、イタリアとほぼ同等で4万ドルに少し届かない位置にある。このような低い状態が20年以上も続いているのである。G7で日本とイタリア以外の国は毎年昇給している。20年以上も昇給がないというのは異常な現象でしかない。日本はこれまでインフレ率が非常に低いというのもそれを許して来た理由のひとつかもしれない。

しかし、この現状を多くの国民は知っていたのであろか?仮にそれを知っていたのであったとしたら、それでも自民党政権を許して来たということに筆者は理解できないでいる。

しかし、今後もこのような低い収入を維持して行くというのは社会的にも健全ではない。日本で昇給がない要因のひとつとして日本人の思いやりが影響していると筆者は思う。例えば、ひとりの従業員が「給与を上げて下さい」と経営者に要求しない。そうすれば、会社のチームワークの和を乱す奴だと見做されることを避けようとするからである。誰もが内心そう思っていても、和を乱さないようにという暗黙の規律の影響で誰もが黙っているのである。

外国で長く生活したことのない多くの日本人は自己主張することに慣れていない。その代弁役となる労働組合も弱体化している。しかも、労働組合の組織率は戦後すぐは50%を超えていたが、現在では加盟者は20%以下でしかない。しかも、日本の労働組合は欧米の産業全体を包括した組合と違って、企業別の組合になっている。だから、日本の労働組合は所属している企業が経営不振であると、労働組合も昇給を要求し難い立場に置かれることが往々にしてある。

例えば、スペインだと2大労働組合(スペイン労働総同盟UGTとスペイン労働者委員会CCOO)とがスペインの産業の殆どの業界を包括している。だからその中の1社が経営不振であろうと、組合は昇給を要求して来る。その要求を飲めないとして逆に経営者は会社を閉める場合もある。

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