黒坂岳央です。
アメリカ国内で「大卒はコスパがいいか? 悪いか?」の議論が大きく揺れている。
ウォール・ストリート・ジャーナルとシカゴ大世論調査センターが3月に実施した調査によると、アメリカ人の5割以上が「大卒の価値は取得コストにあわない」と回答している。その一方で、ジョージタウン大学教育労働力センターの調査では、20代で大卒資格を得ることは30代以降で良い仕事を得るためにもっとも確実な道だという研究結果を取り上げている。
日本と比べて米国における大学進学のコストで強いインフレが起きている。調べてみると、筆者がアメリカ留学をした時と比べて、同じ大学の学費、寮費、食費などすべてが大きく高騰している。
はたして、大卒はコスパがいいのか? 悪いのか?

Phira Phonruewiangphing/iStock
アメリカにおける大卒コストは州立と私立で数倍の差がある。州立大学では学費が1万ドルスタートだが、私立大ではこれが3万ドル後半になる。実に3倍以上の格差がある計算となる。そして、アメリカでは日本以上に「大学卒」という資格が強力なシグナリングとして機能する。学生は希望する企業へインターンへ積極参加して内定を得るために必死だ。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、「有名大でなければ、大手ITテック企業のインターンや就職は難しいのが現実」と取り上げており、アメリカの労働市場では「大学は就職予備校」としての機能性を有している点は、程度の差こそあれ日本と大きく変わることはない。否、アメリカの方が日本以上の学歴社会の壁を感じることすらある。
アメリカ系企業によっては、課長、部長職につくにはMBAの取得が不文律ルール、もしくは明文化されていることがある。出世をしたければ大卒であるだけではたりず、更にビジネススクールの出身者でなければいけないということだ。実際、筆者が昔働いていたアメリカ系企業ではマネージャー職以上はほぼ全員がMBAやCPAの資格ホルダーだったし、自分も上司から取得を奨励された。
確かに大学の取得コストは高騰しているが、こと米国の労働市場についていえば大卒なしで有利に戦うことは難しいというのが実情ではないだろうか。そしてこれは日本の労働市場でも事情はあまり変わらない。