一方、A氏は保証金返還を民事的に要求し、また、深田氏を名誉毀損で警察に告発した。一方、J氏はA氏が中国国籍を隠して契約を結んだことについて不法行為による損害賠償の民事訴訟をした。
現在のところ、A氏によってなされた深田氏に対する告発は不起訴。保証金返還要求は第一審で認められ、A氏に対する不法行為については第一審が続いている。
ところが、問題は、この過程で、足立代議士が、衆議院内閣委員会における銃刀法改正案の質疑という本件と無関係な法案の審議の場で、深田氏によるA氏に対する批判は不当であるという質疑とは無関係な国会質問をし、さらに、文化人放送局「報道特注」に出演し、「深田萌絵ちゃんを一回ここに呼んでシバキ倒そうか」などと攻撃したことから、深田氏が名誉毀損と侮辱行為で足立氏を訴えたという話である。
このA氏が日本と中国の二重国籍なのは、日本の国籍法にも合致しないが、中国が厳格な二重国籍禁止を敷いているのにどうして可能になのかなど、A氏の主張によれば経緯は以下のようなことらしい。
1952年に、A氏の祖父であるCXは、中国人女性Dと同国の方式で結婚し、1953年にBX(Aの父Bの中国名)が湖南省で生まれる。1984年AX(Aの中国名)が父BX、母Eの子として湖南省衛阻市で生まれた。
1993年1月28日に中国人女性が亡き日本人C(CXは日本人Cが帰化したものだと称する)の妻として中国の方式で婚姻した旨の証書を在中国日本大使に提出し、防府市役所で受理され、既に故人であるCの戸籍が編成された。1993年1月28日にBが故人であるCと中国人女性Dの子としてDにより在中国日本大使に届出、亡の前記戸籍に入籍。
1994年Bは東京都中野区長にBと中国人妻Eの子としてAを届出、同人の戸籍に記載。
深田氏やJ氏によれば、中国のネットなどでもAXは漢族の中国人で名門の出身と名乗っているとか、BXも漢族と称しているし、中国人CXが日本人Cであるという証拠は何もないという。また、なぜ、Cが生前に帰国などしながら自身の日本国籍回復やBの日本国籍取得のために動かなかったかも不自然という。
訴訟案件についての判断は差し控えるが、戦後、多くの日本人が中国にさまざまな事情で残留したのは事実で、彼らの救済を図るべきなのは間違いないし、それが可能になることも必要だ。ただ、そのときに、証拠が十分でないのに認めれば、日本人へのなりすましや犯罪の温床ともなる。
ここは、深田氏も足立氏も二重国籍問題の危険性などについて熱心に取り組んできたはずなのだから、問題を整理し、そのうえで、事実究明や制度議論につなげてほしいものだ。
また、足立氏は原英史氏に対して森裕子氏が国会質疑における免責特権を利用して安全地帯から国民を攻撃した事件で、森氏を批判していた立場であるにもかかわらず、免責特権がある国会の質疑の場で民間人である深田氏を攻撃したのかよく理解出来ないと誰しもが思うし、分かり安い説明を足立ファンも望むところだ。
そもそも、在留孤児に限らず在留邦人やその家族と称する人たちの認定については、甘い運用がされている印象がある。その場での雰囲気で親子や親戚だと日本人が確証がないのに認めてないかといった問題が取り上げられるきっかけになれば好ましいことだ。
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