ボリューム感と価格のバランスの問題

そして今回、お弁当の容器をめぐる話がSNS上で新たにネタとして取り上げられている。セブンのチルド弁当の丼ものは、円筒状や立方体状の容器部分にご飯が詰められ、その上に乗せられた皿に具材が入るかたちで売られているが、容器の高さに対してご飯が半分ほどまでしか入っていない商品があるという指摘が続出。容器の「底下げ」によってご飯が多く入っているように見せかけているとの批判を招いているのだ。一例として「とろたく丼」(648円)をみてみると、確かに指摘どおりといえる状態であることがわかる。

ご飯が容器の半分…セブン「底下げ」で容量多く見せだと話題、コンビニ側の意外な理由
(画像=セブン-イレブン「とろたく丼」のパッケージ全体(左)と容器の断面図、『Business Journal』より引用)

果たしてセブンに中身を多く見せる意図はあるのか。小売業などへのコンサルティングを手掛けるBelieve-UP代表取締役の信田洋二氏はいう。

「優良誤認や風評被害はコンビニチェーン本部が最も危惧・警戒している点であり、今回の商品については他にも同様の商品があり、特に優良誤認を与えるというレベルではないと判断できる。商品の発売に際しては、近年では事前にテスト販売地区(80~240店舗程度)において商品のテスト販売を必ず実施しており、その実績によって取り扱い地区の拡大などの判断がなされる。テスト販売では販売数やお客さまからの評価・クレームなどの発生件数など、その動向について詳細に分析を行い、販売を推奨するかどうか慎重に判断をする。

セブンの店舗数は2万1500店を超えており、弁当1アイテムの推奨を全店で行う場合、その原材料の手配や包装資材などの製造・手配などには、莫大な労力と資源を要する。それだけ手間暇かけたものが、一瞬の風評被害ですぐに推奨の取り消しなどで発売中止という憂き目にあうと、手配した原材料や包装資材など、相当額の損害を被ることになり、環境保護の観点からも大きな問題となる。それだけに、全国一斉での推奨に際しては、これらの手順を踏んで十分に安全性や商品価値が確認できたもの以外は発売できない。

今回の容器についても、それらの十分な『下準備』『下調べ』がなされて発売されていると思われ、テスト販売でお客さまから申し出やクレームがなかったものと判断できる。お客さまが『ご飯が容器の底までずっしりと詰まっている』と言うのは、あくまでもお客さまのイメージであり、商品を持ってみて、その重量感やボリューム感を感じて納得した時点で購入につながるものである。『底下げしている』と感じれば、別の選択肢に切り替えれば良いだけの話であり、ことさらにこの商品について問題とすべきでない。

昨今の物価上昇のなか、チェーン本部では見た目や重量感といったボリューム感と価格のバランスのギリギリのところをどのように攻め込むかという議論が活発化していると聞く。お客さまの求めるボリューム感と価格のバランスは永遠のテーマとして論じられているのである」

容器の共通化

なぜセブンは本商品で、内容量(ご飯)に対して、大きなスペースが生じるほど底が深い容器を使用しているのか。何か理由があるのか。

「恐らくこの容器は、他の商品との共通資材ではないか。その上で、商品ごとに決められる価格と商品内容量とのバランスを考慮して内容量が決められたと思われる。商品設計においては、例えばご飯の量を少なめにしておかずの満足度を上げたり、逆におかずを少なめにする代わりに味付けを濃く、ご飯の量を多めにして満足感を出したりと、商品の特性によって、おかずの量とご飯の量、そして価格との整合性を絶えず研究している。

今回は共通資材であるがゆえにこのような『感覚の誤差』が生じているのでないか。一つの商品専用に包装資材を設計することは、ほぼない」(同)

一時期、コンビニ各社の弁当や総菜について、「底上げ」などの手法で容量を大きく見せようとしているのではないかと話題になった時期もあったが、実態はどうなのか。

「前述のとおり、さまざまな商品に共通の資材を使用すると、商品によってはお客さまが『底上げ』のような感覚を抱く商材も出て来る可能性はある。そこの一点だけを捉えて『ステルス値上げ』『意図した改ざん』のような表現で面白おかしく商品設計者を叩くような声や記事などがネット上に出回る。だが、例えば包装資材について共通化を進めず商品ごとの専用設計にすると、商品が完売して容器が余ると大量の資材を廃棄することになり、環境保護の観点からも大きな問題となる。

商品原価を少しでも下げ、売価設定もお客さまに購入いただけるギリギリのラインを攻めつつ、見た目のボリューム感を維持しようとすれば、共通の資材では限界がある。都市伝説的な噂話が流布されるケースが多いが、その大半は根拠のないものである。コンビニ各社は同業他社に加えて他業態との競合が激化している昨今では、少しでもボリューム感を持たせた商品設計に知恵を絞り、しのぎを削っている」

(文=Business Journal編集部、協力=信田洋二/Believe-UP代表取締役)

提供元・Business Journal

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