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そのカタチには全て理由がある!あるんだけど…
見よ!下降式ドアと着せ替えパネルだぞ、スゴイだろう!
そのカタチには全て理由がある!あるんだけど…
これでフロントのダウンフォースもバッチリ!

Z1の本題といえば本当ならドアなのですが、あえて他の注目点を見てみましょう。
まず1989年、ユーノス ロードスターと同年デビューですから、当時流行りのリトラクタブルヘッドライトを採用しても良さそうですが、ボンネット先端からちょっと奥にズボッ!と無双座に押し込んだような固定式ヘッドライトを、透明樹脂でフルカバー。
この後に紹介する注目点を含め、そのほとんどは「市販車で可能な限り空力効果を高めるため」に費やされており、奇妙なヘッドライトも常時空気抵抗を少なくするため固定するだけではありません。
フロントで空気抵抗によるダウンフォースが最大となる部分がフロントタイヤ直上となるように設計されており、「その位置で固定していいの?本当にいいの?」というヘッドライトも、空力効果を考えた配置。
さりげなくデュフューザーの役割を求めたテール

さらに素っ気なさそうに見えるテールも、上部後端がスポイラー状になっているのはわかりやすいものの、わからないのがリヤバンパー上へ横に細長く開いた穴。
実はこれ、バンパー下の妙に平べったい横置きサイレンサー(タイコ)と合わせてディフューザーのような整流効果を発揮するエアロボディとなっており、リアの揚力減少、トラクション最大化、高速安定性改善に大きく寄与しています。
ボディ底部の樹脂製アンダートレイと合わせた空力効果への配慮は、まさにレーシングカーのごとしですが、それにしても「もっとカッコよく万人ウケしようと思わなかったのかな?」と思うもので、Z1が実験的に販売されたクルマと推測される理由でもありました。
実際、Z1はどうせ売れないだろうし、コレクションしておいたら希少価値がついた頃に高く売れるかも?と思ったらしい注文が結構相次ぎ、ある程度のオーダーが溜まって、中途半端に希少車にもならなそうだと思われた瞬間に受注はパッタリ途絶えたと言います。
BMWの公式発表で35,000台のオーダーがあったとも、実際の生産台数は8,000台程度で、その8割がドイツ国内向けだったとも言われますが、いずれにせよ2年ちょっと作っただけでアッサリ廃止されました。
見よ!下降式ドアと着せ替えパネルだぞ、スゴイだろう!
シュッと沈むドア

しかしここまではまだ序の口、BMW Z1で最大のポイントであり、自動車イベントでは性能などには一切興味ないマニアからせがまれ、何度も開けしめする姿が目に浮かぶ「下降収納式ドア」に触れないわけにはいきません。
外からはドア直後のリアフェンダー上のキーシリンダーにキーを入れて回し、中からはサイドシルのドアノブを引くと、窓とドアが音もなくスーっとサイドシルへしまわれていきます。
ガルスイングやシザースドアと違って上を気にしなくていいですし、ヒンジドアのように狭いところで隣のクルマへドアパンチする心配もありません。
実は外板パネルがなくても走れる

ドアを収納するため分厚いサイドシルは、強固な側面衝突安全性能も発揮するため、アメリカのように法規上ドアを開けたままの走行が認められた国でない限りは開けたまま走れて、幌も開けフルオープンで走れば、ケータハム スーパーセブンばりの超オープンエア。
これだけ聞くとオープンカーとしてはひとつの理想的形態です。
分厚くて高いサイドシルはスカートを履いた女性や足腰の弱い人の乗車に無理がないか、ダッシュボードに余裕がないからと省略した結果、暖房がなくて冬は寒く、冷房がなくて夏は日射病か熱射病になるのでは…というネガティブ面が気にならない人なら、もう最高!
そこまで気合が入ったユーザーならデザインがちょっと…なんて野暮な事は言わないでしょうし、きっとZ1を満喫してくれるはずです。
現行コペンもビックリな着せ替えモード

なお、樹脂製外板は脱着可能で、現行ダイハツ コペンのごとき、違うボディカラーや、場合によっては違うデザインへと容易にドレスフォーメーション可能な作りとなっていますが、結局その種のサービスは提供されなかったと言われます。
クーペも計画したが、数年後のZ3クーペに似ている

また、少なくともモックアップまで作ったクーペモデルも計画され、外観を見るとクーペというかシューティングブレークですが、割とマトモな外観になっていて、ここから収納式ドア(と分厚いサイドシル)を省いたのが、後のZ3クーペだったかもしれません。
いろんな意味でインパクト抜群だったZ1でしたが、その特色はほとんど誰も真似せず終わり、BMW自身もZ1廃止後数年して作ったライトウェイト・オープンスポーツのZ3では真っ当な若者向けロードスターでした。
「あのBMWにだってネタ車はあったんだ!」という意味で、普段はパリッとしたスーツで固め、フォーマルからカジュアルまでさりげなくバッチリとキメた、清潔感抜群なイケメン男子の意外な一面を見るようで、そんなクルマを見たい時に存在意義があるクルマです。
※この記事内で使用している画像の著作者情報は、公開日時点のものです。
文・兵藤 忠彦/提供元・MOBY
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