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それでもブランドは七難隠す…か?
あえて言えば商用ベンツの真骨頂:初代W638(1996年)
それでもブランドは七難隠す…か?

「メルセデス・ベンツのスリーポインテッド・スターがついて豪華内装な代わり、300万から700万円ばかり高価な、グランエースの超高級版に乗りたいか?」と聞かれた場合、それでもメルセデス・ベンツのVクラスを選ぼうというユーザーは、どれくらいいるでしょう?
クルマ好きの間でよく語られる、「ベンツなんてヤナセが高級車ブランドに育てたけ ど、ドイツ本国に行けばトヨタみたいなメーカーだよ?」という陰口が、あながち間違いでないのを知らされるのがVクラスでしょう。
ヴィトーという商用バンの乗用モデルですから、トヨタでいえばアルファード/ヴェルファイアというより、ハイエースやグランエースのメルセデス・ベンツ版というのが正解。
「さすがベンツ」という褒め言葉も、Vクラスの場合は質実剛健的な頑丈さや高速安定性の意味で使われるらしく、快適性や使い勝手がよい部類でもなく…日本でももうすぐ発売と言われるレクサスLMが、バーゲンプライスに感じられるかもしれません。
あるいは、この種のクルマでもブランドが大事な用途、あるいは見栄が大事というシチュエーションならば、あえての選択もアリだとは思いますが。
あえて言えば商用ベンツの真骨頂:初代W638(1996年)

歴代Vクラスで唯一のFF車、しかし動力性能不足でモアパワーを求められた時、当時のメルセデス・ベンツにはそんなパワフルなFF用エンジンなどないので、フォルクスワーゲンの2.8リッター狭角V6エンジン(VR6)を積んだというあたりで、もはや出オチ感。
「ヴィトー」という商用バンの乗用モデルをMPV(多用途車)として売り込もうとしたのはいいものの、スリーポインテッド・スターがなければ、日本では「ヴァナゴン」の名で売っていた、フォルクスワーゲンのミニバンの最新モデルかと思ってしまいます。
そのボディは「ひたすら箱」で、荷物を積むのに便利だから、人を乗せても大丈夫だろうというだけの割り切りが感じられますが、これを日本でベンツの一種として販売するのに抵抗感ですとか、これまで築いてきたブランドイメージが…と考えなかったのでしょうか?
もっとも、Gクラスがゲレンデヴァーゲンと呼ばれていた頃も、「これをベンツだと思ったら大間違いで、軍用車両上がりのスパルタンな本格クロカンだ」と呼ばれつつ、立派に高級SUVとして成長したのですから、どこでバケるかわかりません。
少なくとも、日本国内での販売を始めた1998年当時はそう考えていたのでしょうが、その頃でも初代日産 エルグランドに比べてあんまりだ、という気はします。
ただ、1990年代は高規格救急車にフォードやメルセデス・ベンツ車が採用されていた時期でもあり、こんなクルマでも素人目線では「ベンツ」というだけで、カッコイイと思っていたのも事実です。