そのうえ、ショルツ現政権は社会民主党(SPD)、緑の党、自由民主党(FDP)の3党連立政権だが、対ウクライナへの武器支援では緑の党、FDPは積極的だが、ショルツ首相のSPDの中には左派系が依然、抵抗している、といった内輪の事情もあった。

しかし、ロシアとの戦いが激しくなり、ウクライナ側からの強い要請を受けてドイツは徐々にだが、その政策を変更してきた。最初はヘルメット、そして軽武器、そして現在は重火器までウクライナに支援している。具体的には、パトリオットとIRIS-T防空システムに加えて、これまでに18両のレオパルト2A6主力戦車、40両のマーダー歩兵戦闘車、34両のゲパルド対空車両をウクライナに納入してきた。供与した武器の多様性では英国、フランスにも負けない。

日本は湾岸戦争で米国に次いでクウェートに多くの財政支援をしたが、クウェート政府の感謝広告には貢献国として日本の名が記載されていなかったことがあった。日本外務省は当時、大きなショックを受けた。日本と同様、第2次世界大戦の敗戦国ドイツでは、「わが国は他の国に負けないほどウクライナに支援してきたのに……」といった嘆き節が一部で聞かれる。

一方、戦争勃発直後ウクライナ側は、武器の供与に躊躇するドイツに対して批判的だった。例えば、ドイツのシュタインマイヤー大統領が昨年4月12日、ポーランド、バルト3国の国家元首と共にキーウを訪問し、ロシア軍と戦争中のウクライナに対し欧州の連帯を表明する計画だったが、「キーウ側がどうやら私の訪問を歓迎していないようだ」という理由でシュタインマイヤー大統領は訪問を断念せざる得なくなった。ウクライナ側にはドイツの過去の対ロシア融和路線に強い抵抗があったのだ。その融和政策を推進していったシュタインマイヤー氏(当時外相)に対して、ゼレンスキー大統領は批判的だった。