「キャラバン」を支える黒幕

そんな「キャラバン」自体はもちろん観光旅行などではないわけだが、しかし中南米諸国からそんな長距離を長い間かけて移動するには当然、食費や宿泊に多額の資金が必要となるはずだ。さらに、合計数百万人にものぼる貧しい人々が、互いに示し合わせることなく自然とどこかで落ち合い、また米国の国境に向けて共に大移動を行うということは考えられないわけで、その背後には組織的な支援があると考えるのが妥当だろう。

実際、「キャラバン」の移動のためにキャンプ場が各地に整備され、キャンプ場への地図まであることが現地からの報道により明らかになっている。これほどの人々が大挙して入国することは受け入れ側である米国に経済的、そして社会的に大きな負担を強いることは明白だが、これほど組織だった「キャラバン」を財政的に支援しているのは誰なのだろうか。

もし「キャラバン」を密かに支援している人物なり組織がいるのだとしたら、彼らは「キャラバン」への金銭的支援でさらなる得をし、その上で米国に経済的負担を与えることで利益を得る立場にある者たちだろう。

一説によれば、著名な投資家であるジョージ・ソロス氏が、自身のオープン・ソサエティ財団を通じて現地の「キャラバン」支援団体に金銭的な支援を行っているのではないか、とも言われている。なお、オープン・ソサエティ財団は前稿で取り上げたBLMにも約340億円を寄付している。

ジョージ・ソロス氏は、2003年のジョージアにおけるバラ革命のように、民主化のスローガンを掲げて自分が気に入らない外国政府を次々と転覆する、いわゆる「カラー革命」に深く関与してきたと言われている。

それによって、ソロス氏やその取り巻きたちにとって都合の良い人物が政権を乗っ取り、新たな権力者になってきたわけだが、ソロス氏がこの「キャラバン」やBLMに資金援助をする目的もまた、ヒト(つまり安い労働力)・モノ・カネの自由な移動によって一部の富裕層をさらに豊かにするグローバリズムを推進するため、さまざまな規制を持つ米国の法体系そのものを弱体化することにより、ソロス氏らのビジネスにとって都合の良い「開かれた社会(オープン・ソサエティ)」を作ることにあるのではないか、とさえ見られているのだ。

事実、「キャラバン」は米国内の人口の多くを中南米からの不法移民に置き換えることで米国の文化や伝統を破壊しつつあるわけだが、識者の中には、これぞまさに世界経済フォーラムが謳う「壮大(グレート)なる仕切り直し(リセット)」の計画の一つなのではないか、と解釈する人もいる。

つまりこれは「作り出された人道危機」であり、「移民の武器化」による米国社会や保守派勢力の弱体化工作に他ならないわけだが、そんなソロス氏とも気脈を通じているバイデン政権自体がこの中南米からの「キャラバン」を密かに支援しているのではとする声もあるようで、この問題の闇はかなり深いと言わざるを得ない。

もちろん、こんなバイデン政権のやり方に怒りを感じている米国人は増加しているようだ。実際にある識者は、「現在はラテンアメリカの国々でコロンビアやブラジルなどが続々と左翼的で全体主義になりつつあるが、米国も同じ状況である。

今は他国から米国への移住希望が相次いでいるが、米国の国策に変化がなく、状況が悪くなれば米国から他国へ脱出しなければいけない、『逆キャラバン』の事態となることもあり得る」との懸念さえ示している。つまり、米国民自身、とりわけグレートリセットに反対する草の根保守層の人々が、自国を捨てて他国に逃げ始めるかもしれない、というわけだ。

一方で、第二次世界戦争における敗戦とその後のGHQによる統治を経て以来、我が国では経済政策や外交安全保障政策のみならず、文化面や社会面においても米国からの影響を強く受けてきたわけだが、私たち日本人は、こんな内憂外患の状態を多く抱える米国が急速に左翼全体主義的な傾向を強め、ある意味で弱体化しつつあるらしい現実を、危機感を持って認識すべきであろう。

実際、「ESGの兵器化」の記事で紹介したように日本も左翼全体主義的な傾向とは無縁ではなく、米国の状況は決して対岸の火事ではないのだ。