「この願いを実現するための『子ども基本法』が先月、施行(しこう)されました。こども本位の政策を作るよう定めています」と、難しい漢字にはふり仮名をふっています。家庭での虐待に触れた箇所でも(ぎゃくたい)とふっています。

産経新聞の見出しは「子どもの日/楽しい気持ちを大切に/相談する『勇気』を持とう」です。「国立成育研究センターが行った『コロナ禍における親子の生活と健康の実態調査』」を紹介した箇所では(こくりつ・せいいく・けんきゅう)とのふり仮名がついています。

「何か変だな、不安だなと感じたら、勇気を出して誰かに話をしてみましょう。きっと助けてくれる人がいます。それはあなた自身が大切な存在だからです。そのことだけはずっと、忘れないでほしいと思います」と、結んでいます。子ども向けにという記者の気持ちが伝わってきます。

読売新聞は「読売KoDoMo新聞」という小学生向けの新聞を発行しているのに、工夫が足りません。「こどもの日/スマホをしまって外に出よう」という見出しです。

「デジタル空間から離れ、実際に体を動かしたり、自然は文化に直接触れたりして、豊かな感性を育んでほしい」、「ネット利用をやめたくてもやめられないといった依存の疑いのある子どもが増えている」。こうした指摘をするのなら、子どもに呼びかけるような表現を考えてほしい。

読売新聞は、教科書のデジタル化批判、chatGPT批判、スマホ批判など、紙離れにつながりそうな技術革新にはいつも、度肝を抜くような大キャンペーンを張ります。「新しいルール作りが必要」といいつつ、そうした流れに対する反対、抵抗が本心でしょう。

紙中心からデジタル中心へという時代の流れは変えられません。若いうちから、どのように使いこなしていくかが必要だと思います。

日経は「子どもの声を聞ける社会に」のタイトルで、「こども家庭庁にとっても、子どもの意見を聞き政策に反映させることは大きな柱だ」と、主張しています。子ども向けではなく、政府に向けて言っている。

日経の場合は、それはいいにしても、「『こどもまんなか社会』の真価が問われている」とか「放課後の子どもの居場所づくりも急務だ」とか、いかにも昔ながらの社説の表現です。「真価が問われる」「急務だ」「試金石となる」など、旧態依然としたスタイルから抜けだしていません。

編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2023年5月5日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。