同教授によれば、クレムリン宮殿への無人機攻撃で考えられるシナリオは、①キーウの「警告攻撃」、②モスクワの「偽旗工作」の2通りとなるわけだ。

参考までに、「ワルキューレ」の場合、「ヒトラー暗殺計画」を練っていたシュタウフェンベルク陸軍大佐らにとって最も重要な情報は、「いつ、どこにヒトラーがいるか」だった。その正確な情報を得るまでヒトラー側に気付かれないように情報を入手しなければならない。そして情報を一旦入手したならば、即実行に移さなければならない。考えたりする猶予はなかった。

同じことが「プーチン氏暗殺計画」でも当てはまるはずだ。ウクライナ側は、プーチン大統領が3日未明、どこにいるのか、休んでいるのか知っていたのだろうか。プーチン氏がクレムリン宮殿にはほどんどいない、夜の時間にそこでは休まない、という情報をウクライナ側が知っていたとすれば、無人機によるクレムリン宮殿襲撃は元々プーチン氏を狙ったものではなかった、というべきだろう。

明確な点は、ロシアとウクライナの両国国境地帯で最近、不審な妨害行為や破壊活動が増えていることだ。ロシアのタス通信が4日報告したところによると、ロシア南部のクリミア半島近くのイルスキ村にある石油精製所のタンクファームが攻撃された。3日未明には、クリミア半島への橋の近くのヴォルナ村で、燃料貯蔵庫が火事になった。クリミア半島の戦略的に重要な港湾都市セヴァストポリの燃料貯蔵所が4月29日、無人機攻撃を受けて火事になった、といった具合だ。

編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2023年5月5日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。