では市場としてはどうなのか、ですが、伸びしろはまだあり、潜在的マーケットは大きいと思います。ただ、市場がまだ一部のオタクにより支えられている感じはします。つまり、スパイxファミリーやチェンソーマンのようにネットフリックスでの放映があるような一般向け広がりがある作品とディープでコアなファン層が好むアニメではギャップが大きく、ここを埋める段階にあります。

ファン層を広げるためにはアニメを読む、観るなどして理解してもらわねばならないのですが、日本のマンガが英語版で買えるものは割と少ないのです。英語版を含む各国語版は日本の会社が自分でビジネスに取り込まず、版権を各国で売るので例えば英語版ならアメリカで作っているものをカナダに入れて販売するわけです。私どももそれを仕入れています。もちろん、国内のみで販売される話題になった作品の原画集(アートブック)なども根強い人気がありますが、原画集が出版される作品は限られており、価格がそもそも日本でも4000円前後するのでよほどのオタクでないと買わないのです。

海外でアニメが人気で国内市場を抜いたなどと言われていますが、ここからどう展開するかが難しいところなのです。

ところで北米アニメには2系統あり、1つがジャパンアニメ、もう1つがアメコミ(アメリカンコミック)でスーパーマンやスパイダーマン系のマンガです。当地、バンクーバーでも2大アニメイベントがあり、冬はアメコミ中心のイベント、夏がジャパンアニメのイベントになります。私どもは夏のイベントに出展していますが、日本の会社の出店は私ども以外、ほぼゼロです。つまり、アニメビジネスが凄ーいと言いながら日本人の誰もビジネスをしておらず多くは香港系かローカル系です。

出店していて思うのは私どものようにアニメの既製品を販売するよりもイラストレーターが独自の作品を制作販売する方に注目が集まりやすいのです。またそのイラストレーションが日本の「かわいい系」もあるのですが、どうしても文化的影響度が強いアメコミのテイストのものが過半数を占める点はジャパンアニメが盤石ではない落とし穴だと思います。これはプロの人でも気がついていない点だと思います。

正直申し上げると日本のアニメ、凄いねと言ってくれる海外での人気ですが、販売系統や販売グッズを含め、それを支える日本の産業バックアップが十分ではないと言ったほうが良いのです。例えば海賊版を取り締まるのは重要なのですが、それ以前に欲しいアニメが観られない、手に入らないという状況を改善するほうが先決なのです。

またアニメも弱小出版社が出している作品が当たったりします。特にBL系なのですが、これらの企業はビジネスの水平展開をする余力が全然ないのです。そうなると例えばそれらのキャラクターのアクスタ(アクリルスタンド)が欲しくても製造していなければ手に入りません。ましてや海外での入手は100%不可能です。私どもでも輸入販売していますが、ようやく蕾が見てきた、そんなレベルです。

アニメビジネスは取りこぼしがあまりにも多いと思います。海外のアニメ市場が1兆5千億円ぐらいに育ってきていますが、個人的には更に数倍の市場規模に育てるポテンシャルはあるとみています。ただ、日本がそれを拡充する体制も姿勢も資金もノウハウも全然ないというのが私がアニメ商品を売りながら思っていることです。残念です。

では今日はこのぐらいで。

編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年5月3日の記事より転載させていただきました。