2048年には日本人人口は1億人を下回る
経済財政諮問会議の「異次元の少子化対策」に関する試算結果が公表された同じ4月26日、国立社会保障・人口問題研究所は、長期的な日本の人口を予測した「将来推計人口」を公表した。
そのうち中位推計(出生中位・死亡中位)の結果によれば、日本人人口に限ってみれば、2048年に人口が1億人を割り込み、2059年には出生数が50万人を下回ることが見込まれている。ただし、外国人の流入が日本人人口の減少を下支えする結果、総人口で見れば、2056年に人口が1億人を割り込むので、外国人のおかげで8年、総人口が1億人を割り込むのを遅らせることができる。
しかし、いずれにしても、2014年6月に閣議決定されたいわゆる「骨太の方針」で、50年後(2064年)に1億人程度の安定した人口構造を保持することを目指されたものの、その時の目標年から8年前倒しで総人口は1億人を割り込むこととなる。
外国人は毎年16.4万人の流入超過「異次元の少子化対策」との関係で注目すべきは、新将来人口推計の前提として、日本人人口の減少を穴埋めしてくれる外国人は毎年16.4万人の流入超過が見込まれていることだ。
つまり、毎年5兆円総額200兆円ほど注ぎ込んだ人口増が最大で180万人であるところ、外国人はノーコストで650万人ほど増加するので、明らかに外国人の流入の方が費用対効果が優れている。
マイナス効果を考慮しない経済財政諮問会議有識者試算しかも、経済財政諮問会議の有識者試算の(公開されている情報をもとにした)問題点は、さまざまな給付策の効果は試算されているものの、今現在、侃侃諤諤、蹇々囂々議論されている財源調達の(マイナスの)効果が含まれていない点を指摘できる。
つまり、先の児童手当の拡充などの支援策が出生率に与える効果を試算するには、財源は天から降ってくるわけでも、魔法の杖があるわけでもないので、財源調達も含めたプラス・マイナス両効果トータルで試算し効果を示すべきなのだ。それもなくプラスの効果だけを切り出しても意味がないし、「異次元の少子化対策」の効果を盛りたいだけではないのかという要らぬ誤解を生む。
国連人口基金は、近年、出生減少に対して政策で操作しようとする国が増え、女性に悪影響が及ぶと懸念し、政策による手厚い支援で一時的に出生を増やしても「長期的な効果は乏しい」との研究結果にも言及している。
だとすれば、出生数が増えれば人口減少のテンポは鈍るため、出生増対策はもちろん重要ではあるが、現状では人口減少の政策による反転は困難であることを直視したうえで、ねずみ講的な社会保障制度の改革や、硬直的な雇用慣行など、日本の長期的な低迷をもたらしている病巣にメスを入れることこそ、急務だろう。
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筆者はバラまきたがる政治と欲しがる国民が跋扈する国の仕組みを変えない限り、「異次元の少子化対策」でも少子化は解決しないことを指摘した『教養としての財政問題』を出版予定です。詳しくはこちらをご覧ください。