ヒスタミンによる食中毒をご存知でしょうか。ヒスタミンによる食中毒は、2020年までの過去5年間で64件発生しており、その患者数は1345人で、その内約6割が0~14歳です。春先の暖かくなるころに増えるこの食中毒について知らベてみました。
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ヒスタミンとはどんな物質か
ヒスタミンは、魚類等に多く含まれる「ヒスチジン」というアミノ酸の一種が、ヒスタミン産生菌の持つ酵素の働きによって変化し、産生されるものです。
ヒスタミン産生菌が付着した魚類やこれらを原材料とした加工品が菌の増殖する温度帯で長時間置かれた場合などに、菌が増殖し、結果としてヒスタミンが産生・蓄積され、これらを口にすることで食中毒症状が引き起こされます。
ヒスタミン産生菌は海水中にも存在しており、漁獲時に付着している場合もあります。
加熱しても分解しない
さらに、このヒスタミンは厄介なことに一度産生されると、通常の調理時の加熱等では分解されないことから、いかに菌の付着する環境を減らせるか、増殖と酵素作用を抑えてヒスタミンを産生・蓄積させないようにすることが対策のキモになります。
ヒスチジンを多く含む食材
アジやカツオ、イワシ、マグロ、カジキ、ブリなどの赤身魚はヒスチジンを豊富に含み、これらのサカナやその加工品が主な原因食品となります。
1998年から2008年までのヒスタミンによる食中毒のうち最も事例数が多かった食材はマグロ(33%)、カジキ(18%)、サバ(13%)だったようです。
食中毒事例の多くは魚介類が原因食材となっていますが、チーズや鶏、ザワークラウトなどによる事例もあります。
ヒスタミンによる食中毒症状
潜伏期間は食後数分から1時間以内で他の食中毒に比べて比較的すぐに発症します。ヒスタミンを高濃度に含む食品を食べた場合、人にもよりますが、30~60分位で顔面、口のまわりや耳たぶが紅潮し、頭痛やじんましんなどの症状がでます。
通常は一日以内で回復し、重症になることは少ないといわれています。
これらの症状は抗ヒスタミン剤によりすぐに症状が回復するため、発症が疑われる場合はすぐに医療機関を受診してください。
ヒスタミン中毒にならないためには
ヒスタミンは一度産生されてしまうと対処は難しいため、産生を防ぐことが最も有力な対策となります。
諸外国ではすべての水産加工品に対してHACCP(ハサップ)という衛生管理が行われていますが、日本では食品中のヒスタミンに関する法的規制がないため、個人での適切な衛生管理が必要になります。
ヒスタミンによる食中毒への対策は以下の通りです。
冷蔵保管
サカナを購入した際は、ヒスタミン産生菌の増殖を抑えるため常温に放置せず、速やかに冷蔵庫で保管しましょう。自分で釣った魚でも、速やかにクーラーボックスに入れる等、常温に放置しないようにしましょう。
エラや内臓を除去
ヒスタミン産生菌はエラや消化管に多く存在するので、サカナのエラや内臓は購入後(または釣った後)、できるだけ早く除去しましょう。
鮮度が低下したおそれのあるサカナは食べないようにしましょう。ヒスタミンは、調理時に加熱しても分解されません。
ピリピリしたら吐き出す
ヒスタミンを高濃度に含む食品を口に入れたときに、唇や舌先に通常と異なるピリピリした刺激を感じることがあります。この場合は飲み込まずに処分して下さい。
以上の4点を徹底することで未然に防ぐことができるでしょう。