オーパーツの中でも群を抜く美しいビジュアルを持つ透き通った水晶髑髏「クリスタルスカル」の存在をどうとらえればよいのだろうか――。

謎の水晶髑髏「クリスタルスカル」

 ある特定の時代に特定での場所で作られたモノであるとしか考えられないのだが、明らかに時代錯誤で出自が不明の不可解な人工物が発見されることがある。いわゆる「オーパーツ(OOPARTS、out of place artifacts)」と呼ばれるモノをどう理解すればよいのだろうか。

 このようにオーパーツは「場違いな工芸品」のことであり、発見された場所や時代とはまったくそぐわないと考えられる謎の出土品や加工品などが該当する。

 代表的なオーパーツには中国とチベットの国境にあるバヤンカラ山脈で発見されたとされる謎の円盤型記録媒体「ドロパストーン(ドロパディスク)」や、2000年以上前に作られた電池ではないかといわれている「バグダッド電池」などがある。

 そうした謎のオーパーツの中でも目を瞠る魅力的なビジュアルで有名なのが透き通った結晶鉱物製のドクロである「クリスタルスカル」だ。

 クリスタルスカルは、アステカやマヤなどのコロンブス以前のメソアメリカ文化の作品であると主張され、多くの論争と憶測の対象となっている。

水晶髑髏「クリスタルスカル」はオーパーツなのか? これまでの研究状況と結論を紹介
(画像=仏ケ・ブランリ美術館所蔵のクリスタルスカル(画像は「Wikimedia Commons」より)、『TOCANA』より 引用)

 世界各地の博物館には、12ほどのクリスタルスカルがあり、そのほとんどはシリカ (二酸化ケイ素) で構成される硬質の結晶鉱物である石英でできていることがわかっている。

 クリスタルスカルにまつわる伝承では、スカルには超常的な力があり、未来を予測したり、病気を治したり、マヤ暦に示された大惨事を未然に防いだりすることができることなどが主張されている。

 メソアメリカ文明の工芸品には火山岩から作られたアステカのモノリスや、黒曜石、半球形に研磨された宝石「カボション」、ヒスイの頭蓋骨マスクなど、さまざまな設定で頭蓋骨がフィーチャーされている。

 アステカ文明とマヤ文明の両方が、ツォンパントリ(tzompantli) として知られる頭蓋骨を並べた祭壇を奉っている。大きなツォンパントリでは500を超える浅浮き彫りの頭蓋骨が展示されている。

 19世紀にはメソアメリカの遺跡に対する一般市民および学術的な関心により、コロンブス以前の工芸品の偽造品の取引が増加した。この取引は多くのトラブルを招いて問題となり、スミソニアン博物館の考古学者であるウィリアム・ヘンリー・ホームズは1886年にサイエンス誌に「偽りのメキシコ遺物の取引」という記事を寄稿して警鐘を鳴らした。

 1857年にフランスの古美術商であり、美術商であり、メキシコのマクシミリアン1世の宮廷の「公式考古学者」であったウジェーヌ・ボバンは、ナポレオン3世の依頼でメキシコの美術品や工芸品を収集する遠征隊を率いた。彼は発見したものをトロカデロ博物館に展示し、その中にはクリスタルスカルのコレクションもあった。

 その後ニューヨークで店を開いたボバンはクリスタルスカルをアメリカの起業家に売却するといくつかの人手に渡り、現在は大英博物館とパリのケ・ブランリ美術館で展示されている。