「本だけではダメだ」

辿り着いたのは、出版社とは思えない結論だった。

「自然科学の面白さ・不思議さ・感動を伝えるには実験や観察が欠かせない」 「実験装置・観察道具・材料を子どもたちに届けることはできないか」

これが、学研の「付録」のはじまりだ。

本物に飛びつく子どもたち

天秤、顕微鏡、温度計。「付録」の製造コストを減らすため「駄菓子屋」のおもちゃメーカーと組む。かさばる「付録」を運ぶため、当時常識だった国鉄(現JR)から、トラック輸送へ切り替える。なんとか、新学期の発売にこぎつけた。

組み立てに失敗しやすく壊れやすい「紙の付録」ではなく、プラスチックやガラスでできた「本物の実験器具」が付いた科学誌に、子どもたちは飛びついた。代理店から追加注文が相次ぎ、発行部数は、3ヶ月後に2倍、5ヶ月後には3倍に急増。1979年には、「科学と学習」の合計発行部数は670万部を記録し、ピークを迎えた。

今でも、学研の社長室には、1960年代の「6年の科学」の奥付(※)文章が貼られている。

※奥付:本の巻末に設けられる書誌に関する事項が記述されている部分

「科学的な物の見方、考え方のできる広い知しきとゆたかなちえをもった人、あなたがそういう人になってくださることを目標に」

大きく進む海外展開

いま、学研のコンテンツが海外の子どもたちに広がろうとしている。

ここ1年半、学研の海外展開は大きく進んだ。

2021年11月には、ベトナム最大級の習い事・教育情報サイト運営企業「KiddiHub」と業務提携。翌22年4月には、学研グループ会社「アイ・シー・ネット株式会社」が、同社と資本提携に踏み切った。

冒頭の発表は、ベトナムにおける資本提携2社目にあたる。提携する「DTP Education Solutions社」は、ベトナム・東南アジア地域の教育企業のリーディングカンパニーと言われる。ベトナムの英語教科書に占めるシェアは約30%。これは国営企業に次ぐ高シェアだ。この、DTP社の学校・書店などの販路を活用し、学研コンテンツの出版・販売を狙う。まずはベトナム。そして東南アジアへ。

日本で育ったコンテンツは海外の子どもに受け入れられるだろうか。

 

【参考】 学研グループウェブサイト 12年ぶり刊行「学研の科学」”体験”を身近に 子どもだけでなく科学が注目されるワケ〈AERA〉 | AERA dot. (アエラドット) 「逆風に向かう社員になれ」 著者/宮原博昭 発行所/株式会社学研プラス