では日本人がなぜ海外で拘束されやすいのか、ですが、日本側にも若干落ち度がある気がします。日本には諜報組織は表立ってはありませんが、諜報をしている機関はあります。警察の公安、外務省、法務省、防衛省、それに内閣調査室です。内調は下から上がってくる情報をまとめ、総合判断をする感じでしょう。警察の公安は国内が中心ですが外事情報部が外国人が絡む国内問題を処理します。外務省は職員による海外の情報収集ですが、スパイ行為までは踏み込んでいないはずです。
問題は法務省の公安調査庁です。その昔の特高警察の流れをくんでいる一方で現在は調査はするけれど逮捕など捜査の強権力があまりありません。そのため公安調査庁不要説があったぐらいです。公調は左翼、右翼の関係を重く調査しますのでロシアや中国の動きや邦人への影響度には繊細に反応します。ところが公調には職員が十分いないこともあり、一般人に協力者になってもらうケースがしばしばあります。要はこれが中途半端なのだと思います。協力者はプロではない、だけど情報だけは吸い上げる、と言う感じです。
上述の中国で拘束された方々が公調と関係があったかは知りません。が、中国でかつて拘束された方にはその疑いがあった人もいたともされます。日本では密告制度が最近増えてきています。が、密告した人や会社にどれだけメリットがあるかと言えばそれが故に不幸な後世を送るケースもあります。オリンパスの元社員の密告ケースは裁判を繰り返したもののその方の人生はその後、浮かばれませんでした。談合事件の密告制度もありますが、企業間の関係は怨念となるでしょう。公調の仕組みもそんなものでいざとなれば知らぬ存ぜぬで終わるはずです。
ある意味、住みにくくなった世の中なのかもしれません。わからないと思って行動してもほぼ全て掌握されている、これが現代社会です。中国やロシアは些細なことでもそれを盾に政治問題化させるのが上手だともいえるのでしょう。
日本国内なら安全か、といえば皆さんの周りには様々な利害関係を巡るスパイや監視の目があり、今後、それはより厳しい方向になるとみています。パソコンやスマホを通じた情報はほぼ抜けているといってよく、むしろ秘匿できないという前提で日々の行動規範をつくるという視点に立つべきなのでしょう。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年4月27日の記事より転載させていただきました。