誤解・錯覚②「魔法の言葉 “生徒のために”」

保護者の方から「面倒見の良さ」を求められているからこそ「休みの日だけどテスト対策やるぞ!」といった時間外に積極的に稼働する塾もあるかと思います。

これを乗り越える魔法の言葉が「生徒のために」です。正直、私自身も同様の発言をし、休日出勤などをしてきました。しかし、この魔法の言葉を使い過ぎると、組織の中で評価者が曖昧になる危険性があります。

例えば、経営者が「今の時期には各家庭に英語の授業を選んでもらい、受講料を上げたい」と考えていたとしましょう。

しかし、現場職員が「生徒のために無料で休日に補習を行おう」というのが当たり前になると会社としては利益を上げることが難しくなります。

だからこそ、社員の評価者は誰なのか、何を求められているのか、というのが明確になっている必要があります。

多くの場合の評価者は上司ですが、塾業界では「生徒のために」という考えから、「誰が求める結果を出さなければならないのか(この場合、上司なのかお客様なのか)」が曖昧になってしまっているのです。

言ってしまえば、お客様から求められている究極形は「無料の24時間運営」ですが、もちろん不可能です。

生徒のために、という思いは素晴らしいですし、個人的には大切にしてほしいと思っています。こうした生徒を思いやった学習を提供するためにも、日頃から「誰が評価者なのか」「求める結果は何か」を明確に分けて伝えるようにしましょう。

誤解・錯覚③「社員みんなが教えるのが上手い/大好き」

塾業界は、人に教えるのがとても上手で、また教えるのが大好きな人が多い業界です。そのため、何かわからないことがあったりした際、上司に聞けば丁寧かつわかりやすく親身に教えてくれるかと思います。

もちろんこれは良いことなのですが、過度に教えてしまうケースは要注意です。

「ここはこうするんだ」と上司が細部まで徹底して指導する…このようなマネジメントは教室長クラスなどの対少人数であればなんとか行えますが、エリアマネージャークラスなど何十人もマネジメントする立場になるとリソースを割くのが難しいのではないでしょうか?

かといって教えなくなると、部下からは「教えてもらってないからできません」といった免責発言につながることがあります。このように好きだからこそ過度に教えてしまうのは避けた方が良いでしょう。

それでは、具体的にどうするべきなのでしょうか?

前提として、評価というものは「経過」ではなく「結果」を評価するものです。これについては当たり前と思われるかもしれませんが、このような発言をしてはいませんか?

「Aさんは夜遅くまで仕事をしていて偉い」
「Bさんはいつも仕事を頑張ってくれているなあ」

もし思い当たる節があれば、これは要注意です。これらは全て経過を評価した発言です。これが続くと、部下も結果ではなく経過、すなわち「どれだけ頑張っているか」をアピールするようになってしまいます。

当たり前ですが、市場が会社を評価する際は「経過」ではなく「結果」で見られます。「面倒見が良いけど志望校に合格できない塾」は残念ながら市場から求められていません。

この前提を浸透させるためにも、部下をマネジメントする際は「結果」で管理をするようにしましょう。

例えば、経過に踏み込んで、どうやれば良いかを一緒に考えるようにすると、目標に届かなかった場合、部下が「教えてもらったやり方が悪いんだ」と他責思考になり、結局その部下の成長につながりません。

だからこそ、上司は結果というゴールを設定し、そこまでの道筋には関与しない、つまり“あえて教えない”ようにするのがポイントです。