走りは両車スポーティ。4WD性能はCX-5、安全機能はZR-Vに軍配
パワートレーンはどちらも複数の選択肢を用意する。CX-5はディーゼル、ZR-Vはハイブリッド(e:HEV)がお勧めだ。CX-5の2.2リッターディーゼルターボ(200ps/450Nm)は絶品。デビューから時が経つものの、実力はいまでもトップレベルと感じる。実用域のトルクと扱いやすさはいうまでもないが、スポーティさも印象的。吹き上がりのよさはCX-60用の直6・3.3リッターディーゼルに負けていない。6速ATとの組み合わせでも不満はない。
ZR-Vのハイブリッドは2モーターのe:HEV。シビックから採用される2リッターエンジン+最新制御の新世代だ。このユニットのよさはモーター駆動を活かした力強さだけではない。エンジンと駆動系に機械的な繋がりがないにも関わらず、まるで繋がっているかのような「直結感」が気持ちいい。雑味のないエンジンサウンドを含め、ドライバーを魅了するハイブリッドである。
フットワークはどうか? CX-5は2021年の大幅改良で最新の技術と考えを水平展開。従来モデルで足りないと感じていた部分がほぼ解消した。ハンドリングは骨太でワクワク感、快適性はシャキッとしているのに柔らかさがプラスされた。総合力はCX-60より高いレベルだ。
ZR-Vはズバリ「視線の高いシビック」である。印象的なのはボディやステアリング系の剛性の高さ。SUVとは思えないほどカッチリしている。サスペンションはロール/ピッチともに抑えたスポーティな味付け。フロントの回頭性の高さと絶大な安定感を持つリアとのバランスは絶妙だ。乗り心地はやや硬めの味付けだが、しなやかな足の動きなので快適である。
走りは、どちらもマツダとホンダの代表らしい完成度が印象的。楽しく、快適なだけでなく、メーカーの個性がうまく表現されている。
どちらも駆動方式はFF/4WDを用意する。オンロード/オフロードを問わない「総合力」は、最低地上高210mmのCX-5が一枚上手。ZR-Vは、どちらかといえばオンロード寄りのキャラクターである。
運転支援デバイスはどちらも充実した内容を用意。実際に使ったときの制御の滑らかさ/正確性は、登場タイミングが新しく最新スペックでまとめられたZR-Vに軍配が上がる。
2台はガチンコライバルではないものの、「エース」に恥じない実力を持ったモデルである。どちらも安心してお勧めできる。価格はCX-5のほうがサイズを考えるとお買い得。ZR-Vも装備が充実し、納得の設定といえる。
心配なのは両車のもう1台のライバルたちだ。CX-5の本来の競合車はCR-Vだろう。しかし、現行モデルは日本で販売終了。北米仕様は新型が発表済みだが、日本導入時期は未定。一方、ZR-VのガチンコはCX-30かもしれない。こちらは2019年登場とCX-5より新しく、メカニズムもスカイアクティブXを含めて最新スペック。ただし、販売は苦戦している。
今後はマツダもホンダも「単一車種」で勝負するのではなく、「群」での戦略を考えたほうがいいのかもしれない。
ホンダZR-V主要諸元
グレード=e:HEV・Z(FF)
価格=389万9500円
全長×全幅×全高=4570×1840×1620mm
ホイールベース=2655mm
トレッド=フロント:1590/リア:1605mm
最低地上高=190mm
車重=1580kg
エンジン=1993cc直4DOHC16V(レギュラー仕様)
最高出力=104kW(141ps)/6000rpm
最大トルク=182Nm(18.6kgm)/4500rpm
モーター最高出力=135kW(184ps)/5000〜6000rpm
モーター最大トルク=315Nm(32.1kgm)/0〜2000rpm
WLTCモード燃費=22.0km/リッター(燃料タンク容量57リッター)
(市街地/郊外/高速道路=19.4/24.7/21.7 km/リッター)
サスペンション=フロント:ストラット/リア:マルチリンク
ブレーキ=フロント:ベンチレーテッドディスク/リア:ディスク
タイヤ&ホイール=225/55R18+アルミ
駆動方式=FF
乗車定員=5名
最小回転半径=5.5m