それらの住宅は「実家だから」という理由だけで放置していると思うのですが、家は住まないと傷むので個人的にはそのような哀愁だけならば取り壊すべきと思います。残念ながら地方に於いて古家を改築して若い方に貸すとしても需要はかなり限定的だし、改修コストもカバーできないかもしれません。
では解体して更地にするにはどれだけかかるかと言えばあくまでも参考程度に申し上げれば200万円前後だと思います。土地の価値は場所によりますが、地方の住宅地ならばさほど期待できるものではありません。それこそ解体しても誰も買わない「実質無価値」になるとみています。
今、親の資産を相続する世代は土地神話をそれなりに見聞きしたり、体験した人が多いと思います。ですが、不動産に普遍的価値があったのは80年代まで。その後は価値ある不動産と無価値の不動産に振り分けられたのです。個人的には都内の不動産でも駅から遠い利便性の悪い不動産は買い手がつかなくなるとみています。路線価がいくらだろうが、それは取引の目ぼしであり、実際には需要と供給だということです。
〇〇に土地がある、△△の山を持っているというのは資産家の気分にさせているだけで実際には誰も欲しがらないのです。事実、北海道の山林が中国人に買い取られているのは山林所有者からすれば売りたくても買い手がずっといなかったからです。それが突然、まずまずの金額で買ってくれる中国人が現れたならば「どうぞ、喜んで」になってしまうのです。それが北海道の山林取引の実態です。
ということは今回の空き家対策措置法で細心の注意を払うべき点は破格の不動産を誰が買うか、であります。外国人が爆買いする可能性がある点について規制や対策はほとんどありません。ここが日本の法律の構造上の問題なのです。今回の法案は国交省が出すのですが、不動産の流動化を目論んでいるのですが、その買い手が外国人ばかりだったらどうするのか、という点につき、法務省や警察と調整しているのか、あるいは対策法案をどこかに謳い込んでいるのかと言えばNOでしょう。
もう一つは不動産価格の二極化がより鮮明になる点です。商店街がシャッター街になり、ほとんど無価値のアーケード街になったように住宅地は歯抜けになり、不動産の需要は大きく減退するでしょう。とすれば利便性など特定の需要喚起が出来ない不動産は価格がつきにくくなり、相対的に不動産価格を押し下げる効果が出てくるとみています。
以前から繰り返し申し上げている通り日本には住宅が多すぎる反面、少子化なのです。子供の出生者数が80万人を切っているのに新規住宅は年間80万戸以上供給されているのです。この計算、どうやっても成り立たないのです。
不動産とはある意味、価値のあるものだったものが邪魔なものになってきたというのが日本の実態かもしれません。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年4月26日の記事より転載させていただきました。