翌20日の同欄では、「08年のサブプライム(リーマン危機)級の損失の恐れ。商用不動産に広がる火種。資金流入が細れば不動産価格は低下し、融資は不良債権化しかねない。厳しい規制の枠外にあるシャドーバンク(影の銀行)への警戒も強まっている」と、丁寧な解説を載せました。

金融当局の迅速な対応があって、金融不安が一気に広がる状況ではにないと、当局は言っています。当局としては不安を煽るわけにはいかないし、そういう一般的な言い方をしておくしかない。

実際はどうかというと、シリコンバレー銀行、クレディ・スイスの破綻処理などが済んでも、危機に歯止めがかかることはないだろうという指摘が広がっています。

日興リサーチセンターの調査報告書では「米欧の金融不安は、資産バブルの崩壊に伴い、一層深刻化していく恐れ。日本の金融機関(特に中小金融機関)や巨大化したファンドの経営問題に波及する可能性もある」「金融引き締め、流動性の減少で、資産バブルが崩壊すれば、広範な金融システム不安の動揺が広がろう」と、不気味な宣託をしています。

日経も社説では「米銀が抱えるリスクへの警戒を怠るな。当初、特殊だとみた事例から金融システムに波及するパターンを繰り返してきた」(23日)などと、指摘しています。

「市場変調」とか「サブプライム級の損失の恐れ」がある状況だからこそ、バフェット氏の登場はありがたい。「積極投資のチャンス」との予言に流れに乗ってくる投資家が多ければ、バフェット氏は儲かる。

そのバフェット氏は「長期で安く資金を集め、高めの配当利回りで利ザヤを稼ぐ」(日経)。それには、異次元金融緩和をいまだに続けている日本市場で、超低金利の資金を調達するのがいい。日銀はバフェット氏にとって、実に歓迎すべき存在になっている。だから来日もした。

日経に限らず、「急速な金融引き締めは景気の減速や金融システムの動揺を招くと、各紙は政策当局をけん制しています。これは正しいようで、正しくない。

これまでの歩みを振り返ると、「金融緩和・財政膨張策の催促→バブルの発生→引き締めへの転換、金融規制の強化→バブルの崩壊・不況→金融緩和を求める政治的圧力、金融規制の後退」というサイクルの繰り返しです。

風船を膨らませ、破裂しそうになって、空気を抜くと、風船はしぼむ。しぼみすぎることに対する抵抗、不満、政治的圧力が高まり、手加減する。インフレやバブルが落ち着いてくると、また風船を膨らませる。こうしてどんどん風船は大きくなる。

大きな風船が破裂した場合の損害、影響は大きい。うっかり空気を抜けなくなる。そのサイクルです。ぶつぶついっても始まらない。金融資本市場、マネー市場にサイクルがビルトインされ、抜け出せないからです。

米国の中規模銀行を規制強化の対象から外したのはトランプ氏でした。そこが危機の発端となった。パウエルFRB議長の引き締め開始が遅れ、高インフレを招く原因を作ったのも、政治的な圧力によるところも大きい。

バフェット氏はとっくに、そうしたサイクルを見抜いて、動いているのでしょう。ですから私は日経のように、インタビュー記事を1面トップを置くような行動には懐疑的です。

編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2023年4月24日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。