スペイン人にとってカタラン語は外国語のレベルだ
読者は、カタラン語がスペイン語とどれだけ違うかということを理解してもらう必要がある。仮に日本で譬えれば標準語と沖縄語ぐらいの違いがあるであろうか。マドリード出身でカタラン語について全く前知識のない人がカタルーニャを訪問してカタラン語を喋られたら90%は理解できないであろう。
筆者はバレンシア市内から離れたバレンシア語を日常喋っている町民の町に住んでいるので毎日バレンシア語を耳にする。だから、カタラン語を聞いてもある程度理解できる。なぜならバレンシア語はカタラン語に非常に良く似ているからである。
この二つの言語は同じで発音が些か異なるのが違いである。特に、カタラン語には濁音が多く、バレンシア語を理解する人はそれを聞きなれるようになったらカタラン語はまったく問題ない。実際、バレンシア出身の人が多くカタルーニャで働いている。
カタルーニャの公立病院で働くにはC1レベル習得が義務ところが、問題はスペイン語しか知らない地方の人がカタルーニャで勤務するのはあたかも外国で働くような心境にかられるはずだ。同じ文化で育っていながら異なった言語で喋られるというのは異様な感を覚えるはずだ。
同紙によると、この2年間でカタルーニャ政府はアンダルシア、メリーリャ、セウタ出身の看護師を1400名採用したそうだ。何しろ、カタルーニャでは看護師が不足しているからだ。採用はされたが、公立病院で勤務を継続できるには、その後カタラン語を勉強してC1のレベルを取得する義務がある。
4年前からカタルーニャの病院で勤務するようになったアンダルシア出身のソニア・マルティネスさんは次のように述べた。「私はこれまで3つの公立病院で勤務した。カタルーニャは私を快く迎え入れてくれた。私は病院の第一線で働いている。しかし、言語(カタラン語)の問題が勤務するのに次第に大きな障碍となっている。また、それがさらに拡大して行くと思う」と語った。
彼女のようにカタルーニャの病院で数年勤務したあと、アンダルシアに戻ってその経験を活かしたいと思っている者にとって言語の問題がより重くのしかかって来ることに強い不満と不安を感じているのである。
実際、カディス出身の彼女の仲間でヴァイ・デ・ブロン病院で勤務していた看護師はビデオを介してこの問題を批判したことが公になり、彼女は解雇されたという。
マルティネスさんが指摘しているのは、州政府が余りにもカタラン語の普及に執着すると、患者が犠牲になる可能性があることだ。実際、「ある重要な対応でカタラン語を理解することができなかったときがあった。通訳してくれた人がいたので解決したが、患者を危険にさらしていたかもしれない」と述べた。
病院の中で数人が集まってカタラン語を喋っている時に何を言っているのかわからない状況に置かれると仲間外れにされたような心境に駆られる時もあるという。
3年前からカタルーニャの病院で勤務しているアルメリア出身の看護師ホセ・アルバレスさんも同じ意見で「言語についての政治紛争が最後には患者に損害をもたらすようになる」と述べている。
メリーリャ出身の看護師マリア・ルイスさんは2年半前にカタルーニャに到着。彼女が言うに「新しく外国語を覚える必要がないと思って、外国で勤務することを止めた。ところが、ここで(カタラン語の)習得を義務づけるようになっている。それを事前に知っていれば、ノルウェーに行っていた。そこでは6000ユーロの給料が稼いでいたはずだ」と語った。カタルーニャでもらっている給料はその3分の1である。
カタルーニャと言ってもスペインだ。スペイン語を喋って勤務に障碍のないようにすべきだ、と指摘しているのはハエン出身の看護師モニカ・ミゲレスさんだ。
彼らの指摘をよそに、カタルーニャ州政府は2022年にカタラン語の普及を強化するという意味で100つの対策を提示したそうだ。その中でカタラン語の普及強化の対象になっているのが衛生医療分野だそうだ。それは州外から来て働いている看護師にとって「カタルーニャから去る方が賢明だ」というサインになる可能性があるという。