この後、冒頭紹介した「Winnyの開発は早すぎたのでしょうか。それとも遅すぎたのでしょうか」の一文が続き、その後に以下の文章が続く。

Winnyに関して色々言われていますが、これらの問題は技術的に解決可能だと思っていますし、Winnyは将来的には評価される技術だと信じています。

ソフト開発ではまずベータ版(試作品)を出して、バグ(欠陥)やセキュリティ・ホール(安全上の弱点)を利用者に指摘してもらい、改良を加えて完成版にしていくのが一般である。

2004年5月に金子氏が逮捕された後はこの作業がストップしたため、映画でも紹介している愛媛県警を始め多くの公的機関の情報が流出し、回収不能となった。2006年3月、安倍官房長官(当時)がWinnyの利用自粛を要請するにおよんで、Winnyはすっかり悪者になってしまった。

映画でも金子氏はたった2行の改良でWinnyの脆弱性を克服できると証言している。陳述は以下のように結ぶ。

ここで今日、いろいろ言われてきた問題に対する対策を施したWinnyを持って来ました。しかし、今の私にはこれを公開することすらできません。私が、Winnyの開発中断を余儀なくされてからすでに2年半以上にもなりますが、その間にも世界中でさまざまな新しい技術が生まれ、私の方でも新しいアイディアを思いついています。ですが、それを実際に形にすることすら出来ません。私にはそれが残念でなりません。

金子 勇

「国破れて著作権法あり」の表紙下の緑の帯は「YouTube に先んじること3年、2002年5月、Winnyは誕生した。」という文章で始まる。

金子氏が開発中断を余儀なくされ、新しいアイディアを思いついても形にできずに手をこまねいている間に、世界はWinnyに追いつき、追い越してしまっただけに金子氏の無念やるかたない気持ちに胸が締め付けられる。