みなさんは「シンコ」という魚をご存知でしょうか?
実は「シンコ」は成長とともに呼び名の変わる出世魚で、寿司ネタでよく耳にする「コハダ」の幼魚です。
ここでは、江戸前寿司の高級ネタでもある「シンコ」について解説します。
シンコとは?
江戸前寿司の中でも特に仕事に丁寧さが必要といわれるネタの「シンコ」。
光り物の一種として江戸前寿司の中でも特に愛されているシンコですが、一方で出世魚としての側面もあります。
シンコは大きくなるにつれ「コハダ」、「ナカズミ」、「コノシロ」と名前を変えていきます。
シンコが成長した「コハダ」はお手頃価格のネタとしてよく見かけますが、シンコはその姿をあまり見かけませんよね?
実はシンコはコハダなどとは違い高級魚の一種です。
不思議なことにシンコは成長して出世すればするほど値段も下がっていく特徴があります。
この特徴にはいくつか理由がありますので、シンコについてご紹介しながら解説していきます。
出世魚のシンコ

シンコが出世魚ということは、特定の魚の幼魚ということになります。
シンコの成長した姿は「コノシロ」といい、ニシンの仲間になります。
生態

シンコが成長した姿のコノシロは東北以南の太平洋や日本海、そして黄海、東シナ海に分布しています。
沖合ではなく、内湾や汽水域に群れで生息しています。
腹部が銀白色なのに対し、緑がかった背をしており、これが寿司ネタになると美しく輝くとともに食欲をそそる姿となっています。
シンコは成長すると名前の変わる出世魚
冒頭でも解説しましたが、シンコは成長するとともに名前が変わる出世魚です。
大体の大きさで名前が変わっていき、このように呼ばれます。
・卵から孵って4cm-5cmまでの幼魚はシンコ
・7cm-10cmぐらいまで成長するとコハダ
・13cm程度になるとナカズミ
・15cm以上でコノシロ
シンコは江戸前寿司の花形

職人による仕込みの腕の見せ所でもあるシンコは味わいも絶品で、コハダの旨味がギュッと濃縮された様な味わいで古くから愛された魚です。
寿司として人気のシンコ
シンコはその大きさが5cmほどと非常に小さな魚です。
しかし、小さいからとそのまま寿司に使われるのではなく、鱗を取り、頭や尾を外し、骨と内臓を取り出し、塩をふってコブ〆にします。
小さいため鱗を取るなどの下処理も大変ですし、コブ〆する酢の加減など他の魚以上に丁寧な仕事を要求されることから、職人の腕前が分かるネタともいわれています。
寿司の中でも一番の人気を誇るトロが仕入れで8割決まると言われるのに対し、シンコは仕込みで8割が決まると言われるほどですから、美味しく食べられるかどうかは職人の仕込みの丁寧さと腕前にかかっているようです。
コハダだと切り身が一枚乗っていると思いますが、コハダより身の小さいシンコの場合、切り身を2~3枚乗せる店が多くなっています。
仕込みに手間がかかるというのも「シンコ」が高級と言われる所以ですね。
また、シンコの旬は6月から7月なことから、夏の訪れを告げる魚としても珍重されていました。
江戸時代、江戸っ子たちは初物は何が何でも、いくら払ってでも食べたいという性分の人たちが多かったようで、そのため夏を知らせるシンコは非常に高値で売買されていました。
その風習は今でも陰ながら残っているようで、現在も東京ではシンコの初物が1kgあたり数万円することもあるそうです。
出世すると人気が無くなる不思議な魚

万単位の金額にもなるシンコですが、成長した姿のコハダなどは美味しいにもかかわらず、非常にお手頃価格で食べることができる魚になっています。
モジャコが成長したブリや、セイゴが成長したスズキなど多くの出世魚は成長し大きくなるにつれて高級になっていきますが、シンコだけは幼魚のほうが高い魚となっています。
これは、シンコの旬が6月から7月の夏なのに対し、成長したコノシロの旬が晩秋から冬にかけてという他にも多くの魚が取れる時期と被っているの原因となっているようです。