腐敗した学術会議に代わって、科学技術庁の中で調整役だった科学技術会議が2001年の省庁再編で内閣府の総合科学技術会議になり、諮問機関としての役割を果たすようになった。総合科学技術会議の中に、学術会議改革委員会が設けられた。
2003年に発表された学術会議の改革案では、欧米主要国のアカデミーのような政府から独立した法人格を有する組織とするよう求める総合科学技術会議と、それに抵抗する学術会議の主張が両論併記のまま「今後10年以内により適切な設置形態を検討する」と約束し、問題を先送りした。
その後も2015年に内閣府の有識者会議が提言を出し、経団連が提言を出したが、いずれも「国から独立した法人格」をもつことが望ましいとしている。
政府から独立したアカデミーになるしかないこのように学術会議は学問の世界の「戦後レジーム」だが、死に体になったので放置されていた。その政治利用が安保法制のころからまたひどくなったので、政権が人事に介入したのだろう。
菅首相があえて6人の欠員を出し、自民党がさっそくプロジェクトチームをつくり、河野行革担当相が学術会議を行革の対象にした手際のよさをみると、意図的に「きわどい球」を投げて改革のきっかけにしたようにもみえる。
学術会議側は「6人を任命拒否した理由を説明しろ」というが、政府が諮問機関の人選を決めるのは当たり前で、誰を任命しなかったか個別に説明する必要はない。人事の独立性をもつ民間団体になることを拒否したのは、学術会議なのだ。
民営化の話が出てくると「論点のすり替えだ」と逃げるが、これこそ論点の矮小化だ。上でもみたように、学術会議が無用の長物になったのは、改革を拒否して占領体制の遺制を70年も放置し、「国営組織」の権威にしがみついてきたからだ。これを機に特殊法人や独立行政法人などの中途半端な制度設計も見直し、完全民営化できるものはすべきだ。
政府の科学技術予算はもっと増やす必要があるが、学術会議のように学会ボスが科研費を仕切って老人がポストを独占する状況が、日本の科学技術をだめにしている。今までも多くの関係者が提言してきたように「政府から独立したアカデミー」として人事も予算も独立するしかない。その予算は政府が委託研究費として支援すればいい。