アップルがゴールドマンサックスと組み、預金獲得に動き出しました。その魅力的な預金利息は4.15%。アメリカの貯蓄口座(Saving Account)の平均預金利息が0.37%であることを考えると10倍以上になるため、強烈な預金移動が起きるとみています。場合によっては世の中の金融不安をあおり過ぎることになり、販売中止に追い込まれる事態もないとは言い切れません。

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このアップルの新サービスはアメリカのみ適用され高金利の最大預入金額は25万㌦、つまり預金保護される最大限が上限になります。

何故この商品がアメリカ金融に強烈な突風になるか、その背景はこのブログで何度かご説明してきたのですが、もう一度さらっと復習します。

アメリカには4000を超える商業銀行があります。その99%は中小銀行です。アメリカの金利が垂直上昇したため、金融機関は国債投資に於いて莫大な潜在損失を抱えています。国債は満期まで持てば全額戻ってくるので通常は気になりません。ところが、シリコンバレー銀行のように突如預金引き出しが始まると銀行はいやおうなしに手持ちの含み損がある国債を売却して預金引き出しに備えなくてはいけません。これが中小銀行の経営に甚大なる影響を与えているのです。

現在、アメリカ金融業界では預金の移動が最大の注目です。例えば今週決算発表があったチャールズシュワブは銀行部門と証券部門の両方を持っています。決算発表で明らかになったのは預金部門から証券部門に顧客資金の大移動が起きていたのです。預金は昨年同月比で30%減、一方、証券部門で管理するMMFにはこの3か月だけで28%増えています。MMFとは格付けの高い国債、地方債、社債を中心に運用する投資信託で、日本でも昔、中期国債ファンド(略称中国〈ちゅうこく〉ファンド)が大人気になったのを覚えている方も多いでしょう。