日本には暴力団や過激派などの組織集団による犯罪行為を処罰する「暴力行為等処罰に関する法律」や「組織的な犯罪の処罰等に関する法律」が存在するが、その犯罪構成要件は犯罪の主体が組織集団に限られており、今回のような個人によるテロ行為はこれらの法律の処罰の対象ではない。

そのため、個人によるテロ行為は刑法上の殺人罪、傷害罪、暴行罪、脅迫罪などや、その未遂罪によって処罰するしかない。新聞報道によれば、今回の容疑者は刑法234条の「威力業務妨害罪」で捜査されている。これでは3年以下の懲役または50万円以下の罰金に過ぎず、刑法25条の執行猶予の可能性すらある。

今回、筆者が提案する「テロ行為対策特別法」では、テロ行為の結果や態様に応じて、死刑または無期懲役、もしくは10年以上の有期懲役刑を科することが可能である。今回のテロ行為を見ると、現職の首相に対して鉄パイプ爆弾とみられる爆発物を投げつけており、その態様は極めて危険かつ悪質であり、民主主義の根幹である選挙を妨害する反民主主義的行為である。動機の如何に拘わらずその犯情は極めて重いと言わねばならない。

筆者が提案する「テロ行為対策特別法」には、処罰の厳格化のみならず、テロ行為自体を防止する警備面での諸規制なども含め、抜本的対策を法的に根拠づける規定も設けられるから、法的にも警備面での諸規制が可能となる。

安倍元首相殺害テロ行為後、速やかに筆者提案の上記「テロ行為対策特別法」が制定されておれば、今回のテロ行為を防止できた可能性がある。なぜなら、処罰の厳格化と法律に基づく警備面での諸規制はテロ行為の抑止になるからである。日本の民主主義を守るため、日本共産党や立憲民主党も筆者提案の「テロ行為対策特別法」の制定には反対しないと思われるので、超党派による早急な制定を求めるものである。