では例えばアメリカはどうするのでしょうか?アメリカは原発を少しずつ増やす方向にありますが、その建設費が膨大になり過ぎてちっとも工事が進まなくなっています。つまりフィージブルではないのです。それでもアメリカには地下に資源がたんまりあるので痛くもかゆくもないのです。一方のフランスは原発の大増産をすることを数年前から明言しており、フランスこそ欧州の電力源になるつもりです。これは脱ロシアの点からも支援されているわけですが、原発が支持されているよりも政治的にロシアとの接点を切りたいという今の欧州首脳の意図ではないでしょうか?

難しいとは思いますが、仮にロシアが更生し良い国になったら、欧州は手のひらを反すようにロシアからまたガスの供給を受けたいというでしょう。社会の動静などそのような背景で動くものであり、日本がガチの正攻法で攻めてもまず落ちないが現実です。

ところで韓国は安い電気代を基に輸出産業を伸ばすというのが国策でありました。韓国の電力会社は韓国電力公社という半官半民の上場会社が一つあるだけです。電気代の値上げは政府の厳しい審査があり、長年電気代を低廉に抑え、輸出産業を後押しするのが方針でした。ただ、昨今のエネルギー価格の上昇で昨年は3度値上げし、赤字抑制に努めたものの22年度決算はなんと3兆4000億円相当の赤字となりました。これは過去最悪の赤字で、今までの最大の赤字決算の5倍にもなっています。

日本では現在、物価高克服としての総合経済対策で電気、ガス料金の補助が1月分使用料から反映されています。総予算は3兆円越えです。確かにこの補助金は助かります。ただ、ガソリン代補助を含め、政府が国家を丸抱えできるほどの財源という点で政治的判断以上に振れる旗があるわけで裕福な証だろうと思います。韓国はこの規模の赤字は耐えられないので値上げを続ければ産業界へのインパクトは大きくなるでしょう。

こういったケースは脱炭素を推し進める上で出てきている「副作用」「派生的問題」であり、G7の構成国がどこまでの痛みを可とするのか、その駆け引きかと思います。ではお前は解決策として原子力発電所を作ればよいのか、と聞かれればこれも微妙なのです。アメリカでも原発が工期とコストを天秤にかけると全く間尺に合わなくなっていることを考えれば日本に於ける原発は既存の再稼働は出来ても新設はよほどのコスト意識と安全性と原発処理方法を確立しなければ現実的ではないと考えています。