かつてジャニーズ事務所のジャニーズJr.メンバーとして活動していたカウアン・オカモト(当時の名義は「岡本カウアン」)が4月12日、同事務所創業者で元社長の故・ジャニー喜多川氏から受けていたという性被害について日本外国特派員協会で会見を開いた。スポーツ紙や民放テレビ局の報道・情報番組が沈黙を貫くなか、NHKや全国紙各紙、さらには一部民放テレビ局のニュースサイト、TBSラジオが報じるなど、メディア界も節目を迎え状況が変わりつつあるとの見方も出ている。

 ジャニー氏は、2019年7月に死去。生前は多くの男性アイドルを発掘・育成し、世に送り出してきたが、その一方で所属タレントに対する性加害をめぐる問題もささやかれてきた。1980年代から「週刊現代」(講談社)で報じられたり、元所属タレントによる暴露本が発売されたりしたほか、1999~2000年にかけては「週刊文春」(文藝春秋)もジャニー氏の問題を特集。これを名誉棄損だとした事務所側が東京地裁に民事訴訟を起こし、最高裁は04年2月、ジャニー氏について「合宿所で少年らに飲酒や喫煙をさせている」と報じた「文春」に計120万円の損害賠償の支払いを命じたものの、「セクハラについての記事の重要部分は真実と認定する」との判決を下していた。

 だが、主要メディアはジャニーズ側に忖度し、こうした騒動はほとんど取り上げられないまま年月だけが過ぎ、ジャニー氏は死去。そんななか、今年3月に英国公共放送(BBC)が『Predator: The Secret Scandal of J-Pop』という番組タイトルでジャニー氏の性加害を特集したことにより、状況が少しずつ変わり始めた。

 BBCの番組放送を受けて、まずは海外メディア間で情報が拡大。一方、国内メディアは当初、ほぼ沈黙を続けていたが、今月12日、元ジャニーズJr.のカウアンが日本外国特派員協会で会見を開いたことで、ついに国内メディアにも動きがみられるようになった。

 なお、現在はアーティストとして活動中のカウアンは、BBCがジャニー氏の問題を特集する以前にも、同氏からの性被害を明かしていた。昨年11月13日、カウアンは自身のYouTubeチャンネルで、未成年の頃にジャニー氏から受けた性被害を告白。カウアンの実家は愛知・名古屋で、仕事で上京するたびジャニー氏の家に泊まっていたが、その際の体験として、「ジャニーさんがそーっと入ってきて、添い寝みたいの始めて。で、僕の太ももマッサージし出した」「手がどんどん伸びてく、みたいな感じで。で、まぁ、触られましたね」と語っていた。

会見で語られたこと

 同配信から5カ月、今度は記者を入れて会見に臨んだカウアン。12年2月に事務所入りした彼は、ジャニーズファンの間ではその名は知られていたが、退所時期は明確にされていなかった。しかし、今回の会見で16年までジャニーズJr.として活動していたと説明。ジャニー氏からの性加害は入所翌月に始まり、退所まで計15~20回の被害に遭ったそうだ。

 また、以前から一部で報じられ問題視されていたジャニー氏の行為について、カウアンは入所前の時点では「知らなかった」という。主要メディアが報道してこなかったせいと考えられ、会見に訪れていたNHKのディレクターは「私もテレビメディア、とりわけ公共放送に勤める者の一人として大変重く受けとめています」とコメント。このNHKディレクターから「もし当時大手メディアが報じていたら、ご自身の選択は変わったと思いますか?」と問われたカウアンは、「もしテレビが当時取り上げていたら大問題になるはずなので、たぶん、親も行かせないと思います」と回答した。

田村淳「論点がズレている」

 カウアンの記者会見について、週刊誌系のニュースサイトのほか、全国紙・地方紙など新聞各紙は一斉に報道。NHKも会見翌日の13日に16時台のニュースで報じたが、民放テレビ各局の情報・報道番組では触れられていない。ただ、テレビ東京と日本テレビはウェブのニュースサイトで報じており、TBSラジオは12日放送の『荻上チキ・Session』で扱っている。そしてジャニーズ事務所と関係が深いとされるスポーツ紙各紙は、デイリースポーツを除いて報じていない。

 特に強い影響力を持つテレビが沈黙を貫くことに疑問の声が広まるなか、お笑いタレント・田村淳(ロンドンブーツ1号2号)は13日配信のYouTube動画内で、喜多川氏の性加害について以前から話を聞いたことがあったと前置きしたうえで、

「それって本当だったんだ、という感じです」

「まだ右も左もわからない少年に対して、そういう行為で手なづけるってかたちでスターへの道を約束する。こんな方法はあっちゃいけないと思うし、今後こんなことが起きないでほしいって、僕は強く願います」

と発言。一部メディアが報じないことに批判が寄せられていることについては、

「報じるべきだとは思います」

「論点がズレている」

「問題の本質に怒らなければいけない」

と持論を展開した。